日本では古くから親しまれ、縁起物とされ様々な料理に使われてきた『れんこん』ですが海外に目を向けてみると、れんこんは食用として扱っている国は多くはありません。ヨーロッパやアメリカでは蓮を見て楽しむといった鑑賞用とされています。
アジア諸国では蓮の花の部分を食用とする国もあります、今回は日本の郷土料理や地方のれんこん料理とアジアでのれんこん料理の紹介をさせて頂きます。
日本のれんこん料理
日本では穴が多いことから『先を見通す』などの縁起の良い食材という事でお正月や、祝い事の料理によく使用される食材のれんこんです、歴史もあり、地方ごとの料理なども存在します。
縁起物食材やおせちの意味に興味がある方は是非『おせちの意味』も見てみてください。れんこんに対しての記載もあります。蓮根料理でも煮物にするのと矢羽根蓮根にするので少々意味が変わってきたりします。
郷土料理や伝統れんこん料理
郷土料理や伝統料理は、その土地で生産された蓮根が使われていて、珍しい品種やブランド品種が使われいる事が多いです。
れんこんの煮物
愛知県愛西市の郷土料理。厚切りにした蓮根の煮物である。愛西市は愛知県の蓮根のほとんど全部を担うほどの産地である。
この愛知県愛西市は江戸時代に寺の住職がれんこんの栽培をはじめたとされ、れんこんの始まりの土地とされている。
一般的なれんこんの煮物より厚切り。
辛子蓮根
熊本県の郷土料理。蓮根の穴に辛子を混ぜた味噌を詰め衣をつけて揚げた料理。
江戸時代、病弱だった初代熊本藩主・細川忠利公の滋養強壮食として考案されたという。
しゃきしゃきとしたレンコンの食感と、つんと鼻に抜けるからしみその辛さ。酒の当てとして使われる事が多い料理。
はすのさんばい
山口県の郷土料理、当時の岩国から現在に渡るまで栽培を続けている岩国蓮根をもちいた伝統的料理で薄切りにした蓮根と人参を茹でて冷まし、焼いた油揚げと合わせて酢を用いた調味液と合わせた酢の物の様な料理である。
この地方で田の神様を「さんばい」と呼んでいたことが料理名の由来とする説がある。
普通の蓮根は穴が8つなのに対し、岩国蓮根は9つであることから岩国藩主吉川家の家紋「蛇の目九曜紋」と似ており、藩主は大いに喜んだとされている。
岩国寿司(いわくにずし)
殿様寿司とも呼ばれる山口県の郷土料理。大きな箱桶を用いそこに何重にも寿司飯と具を重ね敷いて作る寿司で、一度に何十人分も作るものである。
大きな木枠に酢飯を入れ、岩国名産の蓮根や椎茸、錦糸卵やエビ等を入れちらし寿司のようにして、サンドイッチ状にして重しをして一人前に切り分け提供される。
岩国では祝いの席などではよく使われる料理。
大平(おおひら)
大平とは大平椀を用いて作られる煮物を指す。山口県では鶏肉、岩国蓮根を含む根菜などの煮物が一般的である。
はすのさんばい、岩国寿司、大平の3品は岩国を代表する郷土料理でこれらは「氏盛料理」と呼ばれる。
蓮根の金比羅(れんこんのきんぴら)
茨城県の郷土料理。蓮根生産量日本一の茨城では金比蘿に蓮根を用い、人参やゴボウなどを含め太目に切るのが特徴である。
れんこんは太めに切り、輪切りでなく繊維なりにカットする。
蓮根のコンコン汁
茨城県の郷土料理。キノコの入った味噌汁にすりおろした蓮根を加えた料理。
蓮根のコンコン汁は、稲敷地域の料理コンクール「いなしき味まつり」で優秀賞を受賞した事もあり、学校給食にもなっています。
蓮蒸し(はすむし)
餅蓮根とも呼ばれ、石川県の郷土料理。すりおろした加賀蓮根にエビや白身魚、つなぎとなる卵白、水溶き片栗粉を加え調味し蒸した料理。非常に粘り気があり美味な伝統野菜である加賀蓮根を活かした料理である。
いとこ煮
新潟県の郷土料理。蓮根と小豆を鍋で甘く煮詰めた料理。名前の由来は不明である。古くからある料理で砂糖が希少とされていた時代には塩で作られていた。
蓮根餅(はすねもち)
大阪府門真市の郷土料理。食紅で赤色に着色した門真蓮根とそのままの門真蓮根の穴にもち米を詰めて蒸した料理。もちっとした食感の門真蓮根を用いるのが特徴。
かつては正月などの祝いの席で用いられていたが、門真蓮根の生産量減少を受け最近では見ることが減った料理です。
蓮餅(はすもち)
京都府の銘菓。蓮根から取れるデンプンを用いて作られる餅菓子です。餡が入った物や黄な粉を混ぜるなどバリエーションが豊富な和菓子です。
地域などにより蓮根餅(れんこんもち)や蓮粉餅(はすこもち)などとも呼ばれる。
筑前煮(ちくぜんに)
福岡県筑前地方の郷土料理。鶏肉、蓮根、人参、牛蒡等の具材を油で炒めた後に砂糖や醤油で甘辛く煮た料理。
福岡県の郷土料理に『がめ煮』というものがありますが、こちらは一般的に骨付きの鳥肉を使用するとされています。
がめ煮は諸説ありますが、寄せ集めるという言葉の方言である「がめりこむ」が由来とも考えられており、かつては親鳥の鶏がら、皮、とさかや内臓などすべての部位を使用していた為、鶏から油が出るため、油を使わず調理するという特徴がありました。
現代では油を用いるか用いないかが差であると言われたりもしておりますが、もはや同様の料理として考える県民も多く、作り方、呼び名は各家庭によるところがあります。
たぶ
福岡県、佐賀県の郷土料理。ごぼう、里芋、蓮根、人参、だぶ麩(豆麩)などの沢山の具材をすべて1~1.5cm角に切りそろえて鶏出汁で煮て、醤油味に調味し、水溶き片栗粉で少しとろみを出した汁物。だぶ麩(豆麩)は最後に入れます。
だぶ汁ともいい、だぶ専用の茶碗があるほどです。最近ではだぶ麩の代わりにかまぼこを入れる家庭なども増えてきているそうです。又だぶには葉物の野菜(ネギや三つ葉など)は入れません。
蓮根と糸コンの白和え
福島県の郷土料理。かつては冠婚葬祭等の際に良く作られていた料理。薄切りにした蓮根と擂ったクルミ、豆腐を合わせ調味し白和えにしたものです。
一般的なれんこん料理
皆さんが家庭で作るれんこん料理を紹介させて頂きます。
れんこんはシャキシャキして非常に美味しく身近な食材だと思いますので、是非興味のある料理がありましたら、挑戦してみてください。
れんこんの金平(きんぴら)
キンピラというとゴボウが有名で一般的かもしれませんが、れんこんのキンピラは非常に食感も良くれんこんの旨味も感じられる料理で、お弁当にも、ごはんのおかずにも、酒の当てにもといつでも使いやすい料理で常備食として使われます。
また、調理時間も短く済むこともあるのでお母さんに人気の料理です。
茨城の郷土料理にも紹介したれんこんのキンピラですが、家庭では太く包丁するより、細くそしてレンコンの形を残し調理することが多いと思います。
砂糖・醤油・味醂で甘辛く煮つけた料理。
れんこん挟み揚げ
れんこんの間にひき肉や魚のすり身などを挟みてんぷら粉で揚げた物。
近年和食屋や居酒屋のメニューなどでよく見る一品。大葉等を一緒に挟み香りをプラスして、天つゆや塩で提供される事が多い。
れんこんチップ
薄切りにしたれんこんを素揚げして、焼台などで油を切った料理。
和食店で秋の献立の前菜、揚げ物や八寸などに使用されている事が多い。
作るのは簡単なので家庭でもアレンジして料理として使われている事が多いれんこん料理。
れんこん饅頭
蓮蒸し、蓮根餅として使われる事もある。
蓮根をすりおろした物に大和芋などを混ぜ、海老や銀杏などを加えて蒸して提供する他、焼くまたは揚げたりしたもの。餡を掛けて供したり、椀だねとして用いられる。蒸すまでの工程で供される事もあり地域などにより多少作り方が異なる。
筑前煮(ちくぜんに)
家庭料理代表格で様々な食材を甘辛く煮た料理。
福岡県の郷土料理ですが、全国に普及していて、家庭や地域により違いがある料理。
アジアでのれんこん料理
世界で見るとれんこんを食す国はアジア地域だけとなっております。アジア地域のれんこん料理を国ごとに有名な料理を紹介させて頂きます。
中国のれんこん料理
日本でれんこんが食用として普及したは鎌倉時代に僧道元らにより持ち帰られた品種が食用となった。この品種は中国から持ち帰られたものです。
れんこんの歴史は日本より中国の方が古い。
れんこんは家庭料理などにも利用され日本同様、庶民にまで根づいている野菜といえます。
炒め物やスープ、漬物など様々な料理に用いられます。
中国の主なれんこん料理
蓮藕排骨湯(リアンオウパイグータン)
蓮根と骨付き肉のスープ
蓮根の栽培量が多い、湖北省の名物料理。作りやすさから、中国全土で食べられる庶民の家庭料理でもある。
スペアリブと蓮根をじっくり煮込み、味を調えた料理で各家庭や料理人によって味付けが異なるが素材の味を生かしたスープに仕上げる点は同じである。
糖醋藕片(タンツーオウピエン)
蓮根を炒めて酢や砂糖、醤油などで甘酸っぱく仕上げた料理。糖醋(タンツー)とは砂糖と酢で味付けする調理法を用いた料理で日本語でいうと蓮根の甘酢醤油炒めといった所である。中国の家庭料理の一つ。
ベトナムのれんこん料理
ベトナムでは蓮をお茶にして飲むといった日本とは違う食文化を持っています。この蓮のお茶は一般家庭まで普及していて蓮や蓮根が根付いている事が分かります。蓮のお茶自体は、日本、中国、韓国などにもありますがベトナムでは蓮のお茶以外に蓮の各部位のお茶があります。
ベトナムでは、蓮の花や実などを用いた炒飯があるなど蓮の部位全てを活用します。根の部分はスープやカレーサブジに用いられる事が多いようです。
ベトナムの主なレンコン料理
ゴイゴーセン
蓮の茎を用いてサラダにしたもの。「ゴイ」が和える、「ゴーセン」が蓮の茎を意味しています。蓮の茎のほかにエビやナッツなど様々な食材が入ったサラダ。
タイのれんこん料理
タイではベトナム同様に蓮の実など用いて料理にします。茹でてスープの具材などに用いたり様々な料理に使用されます。
タイでは蓮の実を「パックブア」蓮の茎を「ライブア」といいます。
タイの主なレンコン料理
蓮のヤム
タイ語でヤムは「混ぜる」という意味です。日本では「ヤムサラダ」と表現されています。
蓮の実や蓮の茎など、様々な食材を用いてサラダにしたもの。
ラオスのれんこん料理
ラオスは蓮の生産量が世界1位の国であり2位のエチオピアと比べても倍近い量を生産しています。
そんなラオスでは他のアジアの国同様に実や花の部分はもちろん日本同様に茎部分である蓮根も常食しています。
ラオスの主なレンコン料理
オップイヤン
田ウナギとレンコンの甘辛煮です。唐辛子の辛さとハーブが香るアジアンテイストな甘辛煮。
インドのれんこん料理
蓮は仏教に深い関りのある植物の為、観賞用だけでなく料理としても用いられています。
蓮花はインドの国花です。
インドの主なレンコン料理
Singju(シンジュ)
インドのマニプール料理(マニプリ料理)のサラダで 蓮の茎、木の豆、コリアンダーの葉キャベツ、玉葱、発酵した魚「Ngari」や赤唐、塩、singju pan、ヘイバマナ(この地方の野菜)ショウガなど、非常に具沢山のサラダです。