家庭でも飲食店でも茄子料理を作る事は多い事と思います。
そんな茄子は数多くの種類がありますので今回は『茄子品種』を紹介した後、地域特産の茄子を地域ごとに紹介していきます。
茄子品種
茄子は様々な種があり日本で約70種、なんと世界ではおよそ1000種もの品種があるといわれています。ここでは日本で栽培されている大まかな種類とその特徴を御紹介していきます。
そんな茄子を使った和の茄子料理、茄子の郷土料理、世界の茄子料理を紹介しているページもありますのでそちらも合わせてごらんください。
中長茄子
現在では最も流通量の多い茄子の品種
スーパーなどで袋に3本程入って売っているのはコレ
長さ12~15cm程度の茄子
使いやすく幅広い料理に適しています。
重さで「長卵形なす」とも言う。皮・果肉とも柔らかく様々な調理法で使える。
品種名こそ店頭で表記されていないが、「早生大名」「千黒2号」「くろべえ」「式部」などいろいろな種類がある。
調理法は幅広くどの料理にも合う利便性がある他、収穫量が多くハウス栽培により長期間収穫できるため全国に普及。
中長茄子の産地・旬
全国で栽培
中長茄子の旬は6月~9月
長茄子(大長茄子)
水分が多く果肉が柔らかい
長さ20~30cm程度
蒸し、焼き、塩もみなどで提供されることが多い
西日本の津田長、博多長、ブルネットなどがこの長茄子にあたる。
細長く果肉が柔らかく一般的に皮は薄めであるのが特徴。
長いものは「大長茄子」とも呼ぶ。やや水分が多く、調理法としては蒸し、焼き、塩もみに向く。
東北や西日本で主に栽培され各地で特産品とされている。西日本の「津田長」「博多長」「ブルネット」や東北地方では秋田県の「河辺長」、岩手県の「南部長」、宮城県の「仙台長」などが代表的。
東北で作られる長茄子は果肉がしまっていることが多く漬物に向き、西日本で作られている長茄子は実が柔らかく焼いたり煮たりするのに向いてる。在来種は栽培が難しく、時間がかかったり、不ぞろいになる事が多いのが難点。
現在では多く流通しているのはF1(一代交配)品種と呼ばれる品種で「筑陽」や「黒陽」などです。「大長茄子」は熊本県伝統野菜に認証されている。一般的に煮物や揚げびたし焼き茄子などに向いている。
長茄子の産地・旬
主な産地は九州、東北、大阪
長茄子の旬は6月~9月
小丸茄子(小茄子)
皮が柔らかく、種子がないのが特徴。長さ3~7cm程。
京都の捥ぎ(もぎ)、東北の民田、山形の出羽がある。
一般的なナス科のなすとは違い、サクラソウ科オカトラノオ属の多年草である。実の形はなすによく似ていて小さい。長さ3~8cm程まで収穫されるなすの総称。重さ30グラムほどまでのものを指し一般的に20g程度である。
茄子を小さくしたような形からその名前がつく。
各地域で伝統野菜として受け継がれている。小茄子の中にも丸ナス系と卵型がある。
皮が柔らかく、種子がないのが特徴。主に漬物用として栽培されてる。辛子漬け、浅漬け、糠漬けなどで食されるが、料亭などではその形のまま煮物、また鹿の子や扇の飾り包丁を施され天婦羅にしても食べられることが多い。なすの甘味がしっかりと感じられる。そのサイズから一口なすとも呼ばれる。
小茄子産地・旬
主な産地は山形県、高知県、新潟県など
小茄子の旬は7月~9月
丸茄子
名前の通り丸い、皮が固く果肉が詰まっている
煮崩れしにくい、和食では田楽などに良く使用される。
関西で多く栽培されている。京野菜の加茂茄子が有名。その他では信越地方で栽培が盛ん
主に直径10センチほどのサイズが多くほぼ真ん丸、またはやや扁球形の果実は、皮が硬めで果肉が緻密にしっかりと詰まっているのが特徴。
大きいものでは1kgくらいまで大きくなる。
日本で作られてきたものはへたの部分が紫色。煮崩れしにくく田楽などに使われる。
料亭などでは形を生かし、中をくりぬいて「食べられる器」として用いることがある。
かつては全国的に栽培されていたが、中長なすの人気に押され栽培農家がやや少なくはなったものの現在でも山形県などの信越地方、関西で多く栽培され京野菜の加茂茄子が良く知られてる。
北陸地方では真ん丸ではなく巾着型をした「巾着なす」も出回っていますが、これは中国の丸茄子「北京大円」が北陸地方に伝わり巾着型になったと言われてる。
丸茄子産地・旬
主な産地として、新潟県、奈良県、大阪府など
丸茄子の旬は6月~9月
米茄子
元はアメリカの品種ブラックビューティー。日本で改良され米茄子となる。
ヘタの部分が緑色。
果肉が詰まっていて焼き物、揚げ物、漬物などに利用されることが多い
新潟県魚沼産、長岡巾着などがこの品種
重さが300~400gほど。
「くろわし」や「太郎早生」が一般的であるが品種名ではまず売られてはいない。
和食では田楽焼きなどに用いる他、煮崩れしにくいのでグラタンやシチューの具材などにも利用されることが多い。
米茄子の産地・旬
主な産地は高知県
米茄子の旬は7月~8月
卵形茄子
かつて関東で多く出回っていた品種、中長ナスの需要により現在では流通は激減。
小型のなすで果肉がしまっており皮が薄いのが特徴であり「真黒」という品種が良く作られていた他「千成」という品種も作られていた。主に漬物などに用いていた。
千両茄子
卵形なすと中長ナスの交雑による改良品種。
へたの近くまで濃い紫色になる。関東を中心に東日本で出回っている。
中長茄子に比べると少々短く、胴回りが太い。
卵形なすと中長茄子の交雑による改良品種でハウス栽培に向く。
13~15cm程の長さで皮は艶があり、へたの近くまで濃い紫色になる。
歯触りが良く果肉が柔らかいのが特徴。
岡山県で生産額の一番多い野菜として知られ岡山のブランド野菜にもなっており、その品質は日本一と言われている。また京都・乙訓地域ではタケノコと共に特産物にもなっている。
千両茄子の名前の由来は豊産性と千両箱から溢れる大判・小判を結び付けて名付けられたという。
関東を中心に東日本で出回っています。極早生で初期収量が多く、多収性なのも千両茄子の特徴。備南地区(岡山市の灘崎町と玉野市の一部)でとれた備南千両茄子は令和天皇の即位に伴う大嘗祭で献上されるほどの一品。
千両茄子の産地・旬
主な産地は岡山県、京都府京丹後市など
千両茄子の旬は6~9月
白茄子
東南アジアの品種で果実が真っ白なナス。
皮がややかたい。灰汁が少なく、煮ると煮汁が黒くならない。
越後白茄子などが知られる。皮が白い為、紫色の皮に含まれるナスニンが含まれていない。
白長茄子
20~23cm程の大長タイプの白茄子。
淡緑色でヘタが小さい。
皮が固いが果肉は柔らかく、焼きナスなどに利用できる。
白茄子・白長茄子の産地・旬
主な産地は千葉県、新潟県、埼玉県など
旬は7月~10月
緑茄子
埼玉県などで栽培される緑色のなす。加熱すると身は柔らかくなり、焼き物、炒め物、揚げ物に向く。
埼玉県などでは一般に白ナスと呼ばれるが、真っ白になる品種とは異なり緑色をした茄子。
翡翠茄子、緑なすとも呼ばれる。米茄子程度の大きさの卵型の他、長茄子と同じくらいの20~23cm程になる長茄子系統などがありヘタが小さい。
皮が硬めだが、身は加熱すると柔らかくなりとろっとした食感が楽しめる。焼き物、炒め物、揚げ物など火を通す料理に向くが浅漬けなどには向いていない。
埼玉県の埼玉青大丸茄子や薩摩白茄子などが知られている。埼玉県では青茄子を用いたジャムの製品加工も行っている。
緑茄子の産地・旬
主な産地は埼玉県、鹿児島県など
緑茄子の旬は6月~9月
地域特産品種とは?
ここまで茄子品種を見てきましたが、ここから地域特性を活かした茄子を紹介いたします。
地域特産品種とは、上記品種とは違うのか?という疑問を持つと思いますが、品種とは種と考えてください。そして地域特産とは『気候、水・地質・育て方』などが違う事により味や品質が違うという事です。
これは地域や企業が独自に名称を付け価値を高めるため『ブランド戦略』を用いて販売している。
例えば『京野菜』とは京都で作られた野菜というイメージが強いのではないでしょうか。
(諸説ありますが)京野菜とは『平安京』時代の名残で、海から遠い京都は野菜の生産に力を入れた、地質的に適していたため美味しい野菜が数多く出来た。また全国各地、中国大陸などから朝廷や寺院への献上品として、野菜の生産技術や種などが自然と集った。京都は自然と政治が野菜をつくることができる状況を後押ししてきた。この時代に品質の良い野菜が『京野菜』という認識でした。
そして現在では一言に京野菜と言っても種類があります。
- 京野菜・・・京都で作られた野菜
- 京の伝統野菜・・・5つの基準がある
- ブランド京野菜・・・認証基準や審査会がある
これは京都府が定めたもので確固たるブランドを作る為、基準などをつくり世に売り出しました。
このブランド京野菜に茄子では『賀茂なす・京山科なす』があるが、有名な加茂なすは丸茄子の種を京都に植え出来た茄子です。
茄子品種でもその地域だけが生産している、その土地の在来種などが地域特産品種として紹介していきます。
固定種とF1種とは??
読み進めて頂くと『F1種』という単語が出てくるので、このF1種について解説しておきます。
代々継承されてきた性質や形を受け継ぐのが『固定種』
異なる優良な性質を持つ親を掛け合わせできたものが『F1種』
伝統野菜などは固定種である事が多い。
近畿地方特産、茄子品種
近畿地方特産の茄子品種の紹介です。地域特産品種とは?でも少し触れた京野菜の茄子、大阪独自の水なすなどが有名ですね
水ナス
水分が90%位あり、栄養価も高く、皮が柔らかく身が柔らかい。
大阪の特産品で大阪内の地域ごとに栽培方法などの違いがあり各茄子に特色がありますので紹介します
泉州水なす
江戸時代より大阪府泉州地域(主に岸和田市、貝塚市、熊取町、泉佐野市)で栽培されている特産品で水分の多い卵形の丸茄子は皮も身も柔らかく、甘みがありアクが少ない為、浅漬けにして生食ができるなすです。「なにわ特産品」に認定されています。
栽培が難しく選抜基準も厳しい為高級食材としてほとんど市場に出回る事はありません。大阪・泉州の糠漬けとして有名である。生食すると梨にも例えられる甘さが広がります。また泉州水なすを生で食べるための「泉州水なす用さしみだれ」や泉州水なすを原料に用いた「泉州水なすドレッシング」なるものも販売されている。
馬場なす
大阪府貝塚市で栽培されているなすで皮が薄く傷つきやすいことから市場に出ることはほとんどなく現在では一部の農家でしか栽培されていない「幻の水なす」とされています。
細長い形のなすで皮が薄くずっしりとした重みを感じるなすは生で食べることができさくっとした食感を味わえる他、浅漬けにも用いられます。
澤なす
栽培農家がほとんどなく、他の水なすよりもさらに希少な品種で現在市場にでることがないなすである。ただでさえ難しいとされている水なすの中で、果皮がぼけやすく病気にかかりやすい点で栽培はさらに難しいという。他の水なすと同じく生で食すことができ味も良い。
大阪府の運営するHPでは水なすの発祥を和泉国日根群上之郷村としているが、室町時代の「庭訓往来」には澤なすに対して「みつなす」の読みを振っており、和泉国日根群澤村が水なすの発祥とする説が有力視されている。
加茂なす
京都府の北区加茂周辺で栽培される「京の伝統野菜」に認定されているなすで直径15~20cmに、重さ300グラムにもなる丸なす。
芹川で盛んに栽培されていたことから大芹川という別名があり、また「なすの女王」と称されることもあります。
その起源は明らかではないが貞享元年(1684年)刊行の雍州府志に賀茂茄子と想像される記録があり、一説には上賀茂地区で栽培が始まったという説があります。
円形でしまりが良く黒く艶のある紫色をが特徴。煮物、田楽として利用されることも多い。
もぎなす
明治の初めに現在の京都市左京区聖護院にて在来種のなすから選抜され栽培が始められたのがルーツとなります。
古い歴史をもったなすで「京の伝統野菜」にも認定されています。長さ5cm、直径3センチほど丸い卵形をしていて、皮が薄く濃い紫色をしています。
京山科なす
加茂茄子と並ぶ京の伝統野菜の一つとして認定されたなすで京丹後市で栽培されています。
一説には慶応年間に京都市左京区吉田あたりで栽培されていた小型のもぎなすを大きく改良したものと言われてる。
ふっくらとした卵形の中型なすで薄い皮と柔らかい実が特徴。焼きなす、煮物、糠漬けと様々な料理にあう万能品種で味もよくきれいな仕上がりから京料理には欠かせないなすとして用いられてきた。
シルクなす
兵庫県但東町のオリジナル野菜で色は真っ白である。
アメリカ原産品種を改良した一代交配品種。
果肉がしまっていて糖度水分量が一般的ななすの2倍ほど皮は少し硬め。田楽、天婦羅、炒め物やお浸しに合う茄子。
大和丸なす
奈良県大和郡山市平和地区や奈良市で古くから栽培されている紫色で艶のある丸なす。
奈良県で「大和の伝統野菜」に認定されています。肉質は良く煮崩れしにくく焼いても煮てもしっかりとした食感が残ります。
高級食材として評価されており京都などの料亭に出回っている。栽培に手間暇がかかり一般の茄子に比べて収穫量は5分の1程度しかない貴重な茄子。
杉谷なす
滋賀県黄河氏甲南町の杉谷地区で江戸時代から栽培されてきた丸茄子。
直径10cm程度の楕円形で重さは300~400gにもなる。煮ても形が崩れにくくにもにゃ田楽、炒め物に向いている。
高月丸なす
滋賀県長浜市高月町井口地区で昔から栽培されてきた丸なす、やや巾着型のため地元ではきんちゃくなすとも呼ばれている。
表面は艶があり生産者は10件程度で収穫量の少ない貴重な茄子。果肉は緻密で煮崩れしにくく皮は薄い。煮物によく合いますが、田楽や炒め物、また丸なすには珍しく漬物にもよく合うので地元ではからし漬けや、どぼ漬け(糠漬け)などにもされている。
稲成なす
和歌山県田辺市稲成町特産のなすで1000年以上前に稲成町に伝わってきたという歴史ある茄子。
地元などでは『きんちゃくな』』とも呼ばれている丸型のなすで直径は10cmほど果皮は薄いが肉質は緻密である。
栽培が難しく収穫量が少ないため希少ななすである。和歌山に古くから伝わる金山寺味噌の具材として利用される他、煮物や粕漬などにして食べられている。
湯浅なす
和歌山県有田郡湯浅町で江戸時代から作られてきたという歴史ある茄子。
金山寺味噌用の茄子とされていますがもちろん普通に茄子として食べてもおいしい。
まん丸く果肉は詰まっておりずっしりとした重みがあります。煮崩れしにくく、生で食べても甘みを感じられるほどジューシーで濃厚な味わいの茄子。
かつて栽培農家が1~2軒にまで減少し、絶滅の危機にも面しましたが地域栽培農家たちによる協力を得て復活を遂げています。
湯浅は醤油づくりの発祥の地とも言われ、醤油の起源は金山寺味噌(怪山寺味噌)をつけこんだ桶にたまった汁だとも伝えられています。
中部地方特産、茄子品種
近畿地方ほど有名な茄子はありませんが、『一富士、二鷹、三茄子』の由来になった茄子などあります。
長岡巾着なす(中島巾着なす)
新潟県長岡市の中島地区で明治44年頃から栽培され、長岡野菜に指定されている巾着型の茄子。
果肉は硬めで煮崩れしにくくアクが強いのが特徴。地元では『ふかしなす』としてよく食されているほか、味噌漬けやカス漬けなどにも用いられる。ふかしなすは、刺身のような食感とその美味しさから「畑のトロ」とも呼ばれているそうです。
もともとは中島巾着なすというのが正しい名前ですが、長岡野菜のブランド化戦略の為に長岡巾着なすに変名をしました。ただ伝統的に作られてきた中島巾着なすと現在の長岡巾着なすとでは相違があるという指摘が本来の中島巾着なすを栽培してきた農家の方々の間である。
十全なす
新潟県で栽培されている茄子
泉州水なす系の茄子で大阪の泉州なすがルーツと言われています。
昭和の初めに中蒲原の十全村(現五泉市)で栽培したのが始まりです。十全なすには長岡大島地区に導入された梨なすとも呼ばれる黒十全が存在します。
形状は小ぶりな巾着型をしており皮が薄く、どちらも緻密な肉質であるが柔らかくほのかな甘みと水分量が多いのが特徴。浅めの浅漬けにすると美味。
このほかにF1種の黒十全と別の茄子の1代交配品種の新潟黒十全なすがあり、こちらも浅漬けにすると美味。
現在では一般に販売されている十全なすのほとんどがF1品種の黒十全なすである。
本来の十全なすは白十全なすや本十全なすと呼ばれるようになり、生産量の少なさから幻のなすとして扱われている。
やきなす
新潟市北区(旧豊栄市木崎)で栽培されている門外不出のブランド品種でありその大きさは県内最大級を誇っている茄子。
昭和30年代に豊栄地区の農家が「えんぴつなす」の大型のなすだけを残して選抜していったのがやきなすの始まりと言われています。一般的な中長茄子と比べておよそ3倍くらいの大きさがあり最大で30cm、重さは300gにも及びます。その名の通り焼きなすとして食べられるように品種改良されたもの。
皮は薄く果肉も柔らかいのが特徴で、焼くことで実がしまりジューシーな味わいを楽しむことができます。門外不出のブランドなすでこの地域でしか栽培はされておらず一般に手に入れることは困難。一般的な茄子と違い6~7月に旬を迎える。
深雪なす
新潟県魚沼市薮神地区で古くから栽培されてきた茄子、魚沼推奨ブランドに認定されてる。
十全なすの優良品を30年に渡り選抜し確立したのが深雪なすで現在18名の農家しか栽培していません。
小ぶりでな長卵形で甘みが強く肉質は緻密、皮と実が非常に柔らかいなすで古くから漬物に使われてきました。またアクが少ないのも特徴で鮮度がいいものは生のままでも食べることができますし、炒めたり煮物にして美味しい。
越の丸茄子
糸魚川市で栽培されているブランド野菜の一つ、新潟県園芸試験場で開発された丸茄子で直径は10cm程度、色が濃く光沢があります。大きいもので300gにもなります。
果肉は締まっていて煮崩れしにくく強い甘味を感じます。油との相性が良く炒め物や焼きナスなどに向いています。
東京では料亭などに出荷されており「なすの大トロ」とも呼ばれています。丸なすジャムや丸なすマドレーヌなどの加工食品も生まれています。
魚沼巾着なす
魚沼巾着なすは新潟県城内村(現南魚沼市)の篤農家である栗田忠七氏が、明治時代に和歌山から持ち帰った早生なすと在来の丸なすを交配してつくられた品種。
その名の通り巾着型をしており、果肉は締まり歯ごたえがあり、主に味噌漬けとして食べらる。
新潟の家庭の味であるふかしなすや、炒め物や焼きナスなどにもよく合う。
栽培は難しく手間がかかるため数件の農家でしか栽培されておらず生産量は少ない品種。
えんぴつなす
新潟県白根市で栽培されるえんぴつなすは細長く実の先がとがっていることからこの名が付きました。
昭和10年代に栽培が始まり、宮崎県の佐土原なすがそのルーツと言われて、皮や果肉は柔らかく地元では30グラム程度の内に収穫したものを浅漬けにして、大きくしたものを焼き茄子やふかしなすにして食べる。
上越丸えんぴつなす
上越丸えんぴつなすは上越市の山間部で70年以上前から栽培されてきた歴史ある茄子で上越地域でしか栽培されていない茄子。
2017年8月の野菜ソムリエサミットでは金賞を受賞。
この品種は鉛筆の様に細長いわけではなく先端の方がとがっていることからこう呼ばれいる。
大きめの茄子で直径約8cmと太いが、果肉は柔らかく甘くてアクが少ない。焼いても煮ても旨く万能性がある茄子。
越後白なす
新潟市の西蒲区の岩室から弥彦村にかけて昭和初期から代々受け継がれてきた伝統のブランド茄子。
長卵形で色は真っ白。皮が硬く果肉は緻密で甘みが強く加熱するとトロっとした食感。
田楽や焼きナス、炒め物などの他色を生かして白いシチューなどとも合いますが漬物には向いてない。
栽培が難しく幻の白茄子とも言われいる。また色が真っ白の為、茄子の紫色素の一つである有用成分ナスニンが全く含まれていない。
ヘタムラサキナス
石川県で栽培されている茄子。
加賀野菜にも認定されている茄子で小ぶり、長卵形をしている。
明治22年(1889年)頃、有松泉地区で栽培されていた「小木」と呼ばれる系統がルーツと言われている。
皮が薄く柔らかくて甘みがあるのが特徴。漬物や煮物似合う他、郷土料理のなすそうめんなどにも用る。
吉川なす
福井県鯖江市の西部中央に位置するかつて吉川村と呼ばれた地域で古くから栽培されてきた丸茄子でその歴史は1000年以上とも言われている。
重さ300グラムほどで直径10cm程の丸いなすで表面には艶がある。そのきれいな見た目か「黒い宝石」と称されている。
皮が薄く実が詰まっていて煮崩れしにくいのが特徴で田楽や煮物などに合うとされる。京都の加茂茄子とは類縁関係にあり、一説には吉川ナスが京都に伝わりその後加茂茄子としたという説もあります。
栽培が非常に困難なため一時期は栽培農家が一軒となり消滅の危機を迎えたが、市と農家有志による「伝統野菜等栽培研究会」により復活し、現在も栽培されています。
大塚なす
山形県市川三郷町で栽培されている茄子。
栽培方法が変わっており、田んぼで栽培しています、田んぼで育てることにより豊富な水をなすに与えることができ、美味しい茄子ができる。
ていざなす
明治20年(1887年)ごろから長野県伊那郡天龍村南部の神原地区にて栽培が開始された茄子で信州の伝統野菜の一つとして選定されている。
大きいものは30cm、重さ500gほどになる茄子で、果肉は柔らかくかく熱を入れるとトロトロになる。
成熟すると皮が金色に見えることから「黄金の茄子」とも称される。
焼き茄子や田楽などにされ食されるが漬物には向いていない。
栽培を始めたのは田井沢久吉氏という人物でその名前を取り「田井沢なす」と名付けられましたがそれが訛りいつしか「ていざなす」となりそのまま定着してしまった。
小布施町丸茄子
長野県で栽培されている茄子。
明治時代より小布施町の山王島という地域で栽培が始まり大正時代には小布施町内で30件を数えるまで栽培が広まった。かつては「晩成丸茄」とも呼ばれていた。
丸なすだがやや扁平型の巾着型をしている。肉質はしまっていて煮崩れしにくい長野県の郷土料理であるおやきにもよく合う。
折戸なす
静岡県清水区の伝統野菜で明治以降に栽培が途絶えていた品種だが復活を遂げ2007年から出荷されている。
かつては徳川家康に献上していたという記録も残っている茄子。丸い形をしており棘が鋭く濃厚な味わいが特徴的。
「一富士、二鷹、三茄子」の茄子はこの折戸なす・・・と言われている。
愛知本長茄子
昭和10年頃より尾張地方北部あま市美和地区を中心に栽培されてきた品種。
長さ20cm程の味のいい品種。「あいちの伝統野菜」になっているが現在その栽培数は少なく幻の茄子になっている。
奥三河天狗なす
愛知県設楽町津具地区を中心に栽培。
一般的なナスより栽培に手間がかかるが、その美味しさから現在も栽培されている品種「あいちの伝統野菜」(天狗なすで認定)にも名を連ねている。
名前の由来はまれに天狗の鼻のような突起が出ることから名付けられた。一般的なナスに比べて大きく400~600gほどの大きさにまで成長しきれいな翡翠色の実を付ける。
熱を加えるととろけるような食感になりなすの大トロとも称される。
とげなし美茄子(とげなし輝楽)
愛知県農業試験場が育成し愛知県西三河地区で栽培されているへたにとげのない画期的な品種。これによりなす同士が気づけ合うことなくきれいな状態で出荷できる。
甘味が強く日持ちが良い。油との相性が良く揚げ物や炒め物に最適。
関東・東北地方特産、茄子品種
最後は関東東北地方の茄子を紹介します。
関口なす
秋田県で栽培される茄子で秋田の伝統野菜30品目に名を連ねる茄子。
湯沢市関口地区で古くから栽培され江戸時代の文献にも記載されているほど歴史のある茄子。へたの境目がくっきり白くなっているのが特徴、直径4~5cm程の卵形。皮が薄く果実がしまっている。
甘味と食感の良さから古くから漬物として愛されてきた。
新処なす(あらどころなす)
秋田県横手市十文字地域の新処地区で栽培されている新処なすは「秋田の伝統野菜」の一つ。
巾着型をしており水分が少なく果実がしまっている。皮が薄く種が目立たないので漬物に向いており、秋田県南部の伝統的な漬物「ナスの花寿司」には最適。
くろべえ
岩手県南部の最南端に位置する一関市は東北有数の夏秋なす産地であり古くからこのくろべえという茄子を栽培している。
長卵形の中長茄子。くろべえ自体は福島県や北関東でも栽培されている品種。
民田なす
山形県鶴岡市民田に由来する300年以上前の江戸時代から続く伝統品種。
江戸時代に民田地域の八幡神社の社殿を作る際に京都の宮大工が持ち込んだのが始まりとされている。「やまがた伝統野菜」にも選定されている。
早生系の丸小茄子で果実は15~20gと小さく、辛子漬けや味噌漬けなどに使われる。
民田茄子はその伝統を守るべく畑の周辺には他のなすを一切植えないことを心がけ種の保存に徹している他、種を確保するため形のいい実を種子用に厳選して育て手間をかけて自家採取しているほどのこだわりがある。
松尾芭蕉が「奥の細道」の途中に詠んだ「めずらしや山をいで羽の初茄子」の句は民田なすのことだそうです。
蔵王サファイア
山形県山形市の農産地である大郷地区のみでハウス栽培されており、商標登録されている特産品の「蔵王サファイア」。
使用されているのは真仙中長という品種でこれを若いうちに収穫している為、実は小ぶりで皮はとても柔らかく漬物にむいている。
蔵王サファイアを栽培しているのは現在11人しかおらず、全員が茄子を専門に作っている茄子栽培のプロ。
窪田なす
山形県米沢市の北東部に位置する、窪田地域に由来する茄子。
米沢市の継承作物として認証されているが現在栽培者は数軒となってしまっている。
実は小さく巾着型をしており皮は硬め、歯触りが良く主に漬物として利用されている。
初代藩主の上杉景勝公が会津から米沢入りした際に伝えられたとされ、家臣である直江兼続が窪田町の家中の武士に栽培させたのが始まりと言われていて、その後上杉鷹山公に奨励作物と指定され広まりまった歴史がある。
出羽小茄子
山形県農業試験場にて山形県に伝わるなすの「民田茄子」、「窪田なす」の二つを交配し収穫性を高めた小なす。1961年に命名。
梵天丸茄子
昭和60年代に窪田なすと仙台長茄子を交配させた品種。病気に強く薄皮で歯切れの良い小茄子。
山形市では7月4日のナスの日に梵天丸茄子祭りが行われている。
遊佐のお嬢さん
山形県庄内地方遊佐町ではフランス系品種で真っ白い色をした「遊佐のお嬢さん」という茄子を栽培。
平成10年に誕生した真っ白なナスは普通のなすよりも硬めで果実は締まっているのが特徴。
甘味があり油との相性が良くグラタンやミートソースなどをのせて焼いた焼き茄子などに向いている。
栽培に非常に手間がかかるため生産量を増やせないため希少な品種。歴史は浅いが地元では夏の味覚として愛されている。
仙台長茄子
宮城生産の茄子
伊達藩の時代から作られ400年の歴史を持つ。伊達政宗が朝鮮の役(1593年)の折に藩士の一人が博多から持ち帰ったとされている。紫紺長茄子とも呼ばれる。
燕口に例えられる先のとがったスリムな形、皮が薄く果肉がしまり、ほのかな苦味のある独特の風味が特徴。
皮が薄く漬物に向くため地元の伝統的郷土料理である「仙台長なす漬け」にも利用されている。漬物に利用する際には8~10cm程度の細長いうちに早めに収穫されたものを用いる。
会津丸茄子
福島生産の茄子。
昭和初期から会津若松市の神指及び荒井舘の内地で栽培が定着したやや巾着型の丸なす。
会津の伝統野菜の一つにも認定されており表面は濃い黒紫で黒光りしている。
皮はかたく果肉が詰まっている。油との相性が良く炒め物や煮物、揚げ物などに向いてる。
地元では南蛮煮などにされることもある。
那須の美なす(ビーナス)
栃木県那須塩原市や那須町、大田原氏などを中心に栽培されている茄子。
中長系で色つやが良い。那須のご当地食材を使ったランチプレート「なすべん」にも使われている。
洒落の効いた名前ですね。
奥久慈なす
茨城県北で栽培されている千両茄子系の茄子。
艶のある皮がきれいなフォルムが特徴で市場では「黒いダイヤ」と評される。
常陸大宮市、大子町、常陸太田市、那珂市、ひたちなか市が産地。
寺島なす(蔓細千成なす)
その歴史は古く徳川家綱の時代(1650年代)の徳川幕府は武士に対する食材確保のため、かつて隅田(現在の墨田)という地名だった木母寺の周辺に御膳栽畑(幕府直轄の野菜畑)を作った。
その頃栽培されていた茄子が寺島村に伝播し寺島なすになったと言われている。
元禄郷帳(1688~1794年)によればによれば白鬚神社の周辺に寺島村はありこの地域一帯は水田を主とする近郊農村であったが、隅田川上流から運ばれてきた肥沃な土は茄子作りにも適しなすの産地であった。
享保20年(1735年)の「続江戸砂子温故名跡志」には、「寺島茄子 西葛西の内地。中の郷の先、江戸より一里余」とあり、「夏秋の中の嘉蔬とす。」として、江戸近郊の名産であることが記されている。また文政11年(1828年)に発行された「新編武蔵風土記稿」にも「形は小なれどもわせなすと呼び賞味す」と記され、地域の特産品として千住や神田へ出荷されていましたが関東大震災により地形が変わり向島の畑の消失や、その後の宅地化などによる畑の減少で一度は生産が途絶えてしまいましたが2009年に復活を果たした。
通常の茄子よりも小ぶりな卵型で皮が硬く、しっかりとした肉質が特徴の茄子。
味わいは普通の茄子よりも濃厚で火を通すと甘みが増す。油との相性がいい為揚げたり炒めたりするのに最適。
寺島なすは江戸野菜の一つとしても選ばれています。
江戸野菜。主に現在の東京周辺で生産されていた在来品種の野菜を指し、現在42種類が登録されている。
サラダ紫
大坂の水なすなど複数品種をかけ合わせ育成され、横須賀市で栽培されている茄子。
葉が濃い紫色で巾着型。果実を絞ると果汁が滴るほど多汁な為ずっしりとした重量を感じられる。
一般品種に比べ糖含量が多くジューシー。アクが少ない為果実を切った後も変色しにくいのも特徴、そのままサラダとして食べるとサクサクとした食感。
塩漬けなどにすると柔らかな別の食感を楽しめる。
神奈川県が認定する「かながわブランド」にも登録されてる。
埼玉青大丸なす、埼玉青なす
埼玉県の伝統野菜で明治時代に中国から埼玉県に導入され栽培されてきた巾着型の茄子。
果実とヘタの色が緑色をしており大きめ、果実は濃密でしっかりとした食感。
明治時代には奈良漬けとして食されてきましたが煮物や焼きナスなどの他、油を使った洋風料理にも合う。
青茄子を使ったジャムなどの加工品も販売されてる。かつては白なすと呼ばれた名残りから埼玉県深谷市では現在も白なすと呼ばれています。