日本料理いろいろ

ナスニンとは茄子の紫色の色素。ナスニンの上手な摂取の仕方などの紹介

ナスニン

皆さん普段茄子を食べるとき、何事もなく食べているとは思いますが茄子の紫色って気になった事ありませんか。他の野菜にも色がありますが紫色の野菜は少ないですよね。この紫色の色素がナスニンという物質です。

今回は食材でなくこのナスニンについて詳しく解説していきたいと思います。

茄子品種
茄子品種、地域特産のブランド品種56種 家庭でも飲食店でも茄子料理を作る事は多い事と思います。 そんな茄子は数多くの種類がありますので今回は『茄子品種』を紹介した後、地...

ナスニンの基本情報

ナスニンとは茄子の紫の皮に多く含まれるデルフィニジン型アントシアニンに属するポリフェノールの一種です。紫色の色素こそがナスニンなので白茄子(主にアメリカで見られ日本でも栽培されている白色の茄子)には含まれない。茄子には今まで特質した栄養素がない野菜として見られてきましたが、このナスニンには高い抗酸化作用などがあることが分かりナスを健康的な野菜として認識させた成分でもあります。

ナスニン名前の由来

ナスニンという名前はナスから抽出された成分であることから名付けられました。これはカフェインがコーヒー(Coffee)、テアニンが緑茶(Tea)から抽出しそのままネーミングされたのと同じ由来です。発見者は日本最初の女性学者で、天然色素の研究者として著名なお茶の水女子大学名誉教授の黒田チカである。

黒田チカは1913年(大正2年)に牧田らく、丹下ウメとともに東北帝国大学に入学、これは当時旧制高校を卒業した男子学生のものと認識していた大学に初めて女性が入学したという快挙である。さらに黒田チカは後に玉葱のケルセチンに血圧降下作用があることを発見したことでも知られています。

ポリフェノールとは

ナスニンはポリフェノールの一種ですがポリフェノールとはいったいどのような成分なのか?

ポリフェノールはほとんどの植物に存在する苦みや色素成分でこの自然界に8000種類以上あるといわれています。特に子孫を残すたための種子や、紫外線による酸化ダメージから身を守る葉の部分に多く含まれます。その多くに高い抗酸化作用があることで知られ、その他にも種類によってそれぞれ特質した健康的な効果を示します。ポリフェノールは水に溶けやすく比較的短時間で効果を得ることはできますが持続はしません。植物は紫外線や乾燥、塩分、周囲に生息する菌などから自分の身を守るために光合成によってポリフェノールを生成しているのです。

植物が自分の身を守るために生成するポリフェノールが持つ抗酸化作用は人にも有用で人体における活性酸素の働きを抑えてくれる機能を持ちます。

活性酵素とは?

活性酸素は体内の脂質を酸化させ過酸化物質と呼ばれる物質に変えることで免疫機能の低下や老化などを引き起こします。こうした影響を阻害してくれるのがポリフェノールに含まれる抗酸化作用なのです。

主なポリフェノールとして以下があります。

  • お茶から抽出される「カテキン」
  • ココアなどに含まれる「カカオポリフェノール」
  • ショウガの辛み成分である「ショウガオール」
  • 大豆などに含まれる「イソフラボン」
  • カレーのスパイスであるウコンの黄色い色素「クルクミン」

等があります。

これらポリフェノールの持つ抗酸化作用以外の特質した効果。

  • カテキン・・・抗菌作用、抗ウイルス作用、コレステロール低減作用など。
  • カカオポリフェノール・・・血圧低下、アレルギーの改善など。
  • ショウガオール・・・血液循環作用(血液サラサラ)、殺菌作用など。
  • イソフラボン・・・ほてり、めまいなどの更年期障害の緩和作用など。
  • クルクミン・・・肝臓保護作用など。

その他のポリフェノールにも抗酸化作用の他に人体に良い影響をもたらす効果が見られ、健康食品やサプリメントとしても利用されています。

フランス人は飽和脂肪酸とコレステロール摂取量が多い欧米諸国にありながら、他欧米諸国に比べ心臓疾患罹病率が低く、これはフレンチパラドックス(「パラドックス」=受け入れがたい結論)として知られる。この要因としてフランス人に見られる赤ワインの摂取量が指摘されるようになった。食品機能性研究の結果赤ワインに含まれるレスベラトロールなどのポリフェノールによって、低比重リポタンパク質(LDL=悪玉コレステロール)の酸化が抑制されることが判明した。これを契機としてケルセチン、ルチンなどのフラボノール、エピガロカテキンガレートなどのフラバノール類をはじめとする各種フラボノイド類を含む広範囲のポリフェノール類の食品機能性研究が活発に行われてきた。様々な色調を有するアントシアニンもポリフェノール類として、その生理機能に注目が集まるようになった。

アントシアニンとは

アントシアニンは植物界に広く存在する色素であるアントシアン(果実や花の赤、紫、青を示す水溶性天然色素の総称)のうち、アントジアンがアグリコンとして糖や糖鎖と結びついた配糖体成分のことであり、ポリフェノールの一種である。アントシアニンは他のポリフェノールにはない特質した成分として、眼の網膜にあるロドプシンの再結合に働きかけるため、眼精疲労の回復に役立つといわれています。その他ポリフェノールの一種であることから高い抗酸化作用がある成分であります。

高い抗酸化力を持つ成分としては「カテキン」「ビタミンC」「ビタミンE」などが有名です。また非常に高い抗酸化作用を持つ食品としては「パプリカ」「こごみ」「緑茶」「レモン」などが挙げられます。

ナスと同じアントシアニンを含む植物には、ナスの他にぶどう、ブルーベリー、紫蘇、紫サツマイモ、赤キャベツ、赤玉葱、イチゴ、黒豆などがあります。

ナスの果皮にはナスニンを含め約4種類のアントシアニンが含まれていて、その含有量の90%がナスニンであります。

ナスニンの効果

ナスニンはアントシアニンに属するポリフェノールの一種である事から、抗酸化作用、眼精疲労の回復に対しての効果が見られます。その他血管新生抑制作用および肝臓保護作用、血液をきれいにして高血圧や動脈効果を予防する効果があるといわれています。他にコレステロールの吸収を抑える力なども確認できており、大変健康的な成分だということが認識されます。

ナスニンの抗酸化作用

抗酸化作用は食品により効果には差が出ますが、ナスニンの抗酸化作用による活性酸素(フリーラジカル)の働きを抑える力は強いとされています。他の抗酸化作用を強く含む食品と比べても遜色がなくアントシアニン系ポリフェノール類の中ではトップクラスであります。

ナスニンの効果(特に抗酸化作用について)は2020年7月23日(木)日本テレビ放送の「バゲット」の番組内で工藤内科 副院長工藤孝文先生も効果的であると述べている。

発がん物質に対しての抑制効果

ナスニンのその高い抗酸化作用から現在着目されているのが発がん物質の抑制に対しての効果です。それは高い効果を示していることが分かっておりアメリカではナスニンを含むなすを始め、キャベツ、ニンニク、大豆、セロリなどががんを予防する食品として認定されています。

ナスニンのAMPキナーゼの効果

アントシアニン系ポリフェノールであるナスニンにはAMPキナーゼという成分が含まれています。

AMPキナーゼとは

ストレス反応に活性化され、それを生存に有利な働きをもたらすキナーゼの一種で、細胞がストレスを受けると活性化しストレスによって生じる影響を緩和させる働きを持つつものとされています。

我々人間の各臓器のどの細胞にもあり、その細胞が危機的状況に陥った際にその状態を改善する働きを持ちます。一般的なところではエネルギー不足などの際に、細胞の危機的状況を感知し改善する働きを持ちます。例えば血管の平滑筋細胞においてはAMPキナーゼが活性化することで動脈硬化を防ぐ方向に働くことが知られています。また血管内皮細胞では細胞死を防ぎ、細胞を保護する働きをすると共に血管新生を促進することも分かっている。つまりAMPキナーゼはストレスの影響により弱くなった部分を改善する働きを持つのです。ちなみにナスニンのようにAMPキナーゼを活性化させるメトホルミンが糖尿病の治療薬としても利用されています。

AMPキナーゼはアントシアニンの他、トマトの皮に含まれるナリンゲニンカルコン、カカオ豆に含まれるプロシアニジンなどがあります。

ナスニンを効率よく摂取するには

ナスニンはナスを食べることで摂取できます。ただナスを食べる際に注意していただきたい点がいくつかあります。

ナスニンは水溶性の成分である

茄子 身 揚げる

ナスニンは水溶性の成分であることから水に溶けだしてしまいます。ナスの皮から摂取できますが、ナスを調理する前に必要以上に洗うとナスニンがどんどんと溶け出してしまいます。

ナスニンをなるべく残すことなく接種できるナスの調理法は、揚げ物や炒め物などです。ナスニンは油との相性がいいため溶け出すこともなく、料理面からみても揚げナスや天婦羅、茄子の炒め物などナスを美味しくいただける手段であります。

ナスを上げる際は高温で揚げましょう。ナスは90%が水分のため低い油で揚げると中の水分が残り揚げた後にくたくたになってしまいます。揚げた後、下に敷いたクッキングペーパーなどに紫色の色素がついてしまっていたら、それはナスニンがナスの水分と一緒に溶け出してしまっている状態です。

ナスを茹でたりする際は煮汁も利用すれば、ナスニンは煮汁に溶け出しているためナスニンを接種することができます。また汁物にした場合は汁の中にそのまま溶け出すので余すことなくいただけます。

ナスニンはナスの皮に含まれている

ナスニンは茄子の紫色の皮に含まれている物質ですので茄子を調理する際はナスの皮を剥かずに調理することで摂取できます。

ナスニンは紫色の皮に含まれている為、白ナスや青(緑)ナスにはナスニンは含まれていません。

ナスニンの特徴

ナスニンの特徴として鉄イオンと結合しやすい特徴があり、ナスの漬物や糠漬けと漬ける際に一緒に鉄くぎを加えると色が鮮やかに残るというのもそのためです。ただ市販の漬物などを見ていただけるとわかる通り、漬け汁が紫色になっています。鉄イオンと結合してとどめておけるのはわずかで他は漬け汁に溶け出してしまっているのです。

ナスニンの効果を上げてくれる料理は麻婆茄子

麻婆茄子には豆板醤、豚肉、ネギ、ニンニクなど血流や代謝をよくするものがたくさん入っていて、ナスニンの抗酸化作用をさらに強めてくれる料理であるそうです。

余談

埼玉県加須市にあり、遊園地で農業体験できる「むさしの村」にはナスの栄養素であるナスニンから生まれたナスのニンジャ、名前もそのまま「ナスニン」という可愛いキャラクターがいます。ちなみに得意技はナスヘタシュリケンであるそうです。