春から夏にかけて良く使う魚なのではないでしょうか。地域によってとれる味の種類は多少異なりますが、板前をやっていて鯵料理をしない年などないと思います。
そんな鯵の一般的な料理方法や基本となる情報を紹介していきます。
鯵の基本情報
鯵と言われればアジ科のマアジを指すことが多いが、アジ科の魚は非常に多く50種程存在しています。
アジ科の魚で有名なのはムロアジ、シマアジ、かいわりなどがありますね。
アジ科の魚は紡錘形(ぼうすいけい)か体高が大きい形で知りびれの手前に独立した2本の棘があり、側線上にぜいごと呼ばれる棘のある鱗をもつものが多い。
アジ類はタンパク質20%近く含み、脂肪は不飽和脂肪酸が多く、EPAを含むため、コレステロールを下げる働きが期待できる。
鯵の旬
マアジやムロアジは年中流通しているが5月~7月が一番おいしいとされています。
かいわりは夏~秋口までが旬とされています。
産地
マアジは日本近海、東シナ海に分布、日本海西部、関東沿岸などで特に東シナ海で多く取れます。
ムロアジは伊豆七島、南日本などでよくとれます。
かいわりは宮崎以南、南シナ海北部まで分布。能登半島以南で良く取れる
鯵 名前の由来
諸説あますが
- 味が良いから鯵となった説
- 鯵→参(三)月からうまいからという説
- 本来、鱢(あじ)と書き生臭いという意味を持つ、ここから鯵になった説
①がよく言われますね。
鯵の種類
鯵の種類が多い事は述べさせてもらいましたが、その中でも同じようなものに分類できますので、その分類ごとに紹介いたします。
マアジ類
日本で水揚げされるアジの9割がマアジ。通年出回る、築地市場(豊洲市場)では取扱量もマグロに次いで取引されている。旬にかかわらず高値傾向になっていて、大衆魚とは言えなくなる日が近いのではないかと危惧されている。
日本近海のマアジには瀬付きと沖合を回遊する2種の群れがある。瀬付きのマアジは背が黄ないし、淡青緑色をおびている。回遊するマアジは全体がやや黒っぽい事から、黄アジ、黒アジと呼び分けていることがある。味はやや黄アジの方が良い近年では養殖もあるが、形は整い高値で取引はされているが、味は天然物に比べるとやや劣る。
日本のマアジとは種類が違うがヨーロッパ、南米からは冷凍もの、干物が輸入されている。次の様なものがある。
にしまあじ、北大西洋の沿岸に分布していて、マアジとそっくり大きさは40㎝ほどオランダからの輸入。主に干物や外食産業で利用されていて、味は悪くなく価格は安い。
ニュージーランドマアジ。ニュージーランド北部、オーしストラリア南部の沿岸に分布し50㎝ほどになる。体高はマアジに比べるとやや小さく、ぜいごの数は多い。主に干物されている。
チリマアジ。南アメリカ西海岸の沿岸に分布しており60㎝ほどで大きめ、冷凍で輸入され切り身として出回るが数は多くはない。
むろのあじ類
関東以南の暖海にすむ鯵で、マアジに比べて体が筒型で細長い。脂肪もマアジに比べて少なく鮮度が落ちやすい、種類によっては産地で干物に加工されてしまう。鮮魚で用いる種類として、むろあじ、おあかむろ、あかあじ、は刺身でも美味しい、特にあかあじの刺身は絶品。
おあかむろは全長45㎝ほどになり、ヒレが赤み帯びている。
あかあじは形はマアジに似ている、ヒレが赤みを帯びている、体色は全体的に薄赤い、全長30㎝ほど、旬は秋になる
まるあじは全長40㎝ほど、マアジやや筒型で、ぜいごは側線の後部直線部だけにある。ムロアジ類の中では最も旨い、焼き物が適している。
くさやもろは全長40㎝ほど、背は強く青味を帯びている。伊豆新島の名物のくさやの材料
めあじ
名前の通り目が大きい。全長30㎝ほどになり、マアジより体高が大きく、黄色の縞がある。ぜいごは側面直送部だけにある。味はマアジに劣る。小笠原、沖縄で主にとれる。沖縄では秋~春が旬となる
貝割(かいわり)類
日本のアジ類の中では最も体高が大きく、平たい事からひらあじと呼ばれる事もある。貝割の名は尾びれ形が植物の双葉、貝割れに似ていることからきている。
貝割は銀メッキを施したボディーが特徴。身は締まっていて美味で近海ものとして人気。
鯵料理
庶民的な鰺ですが非常に美味しく、使い勝手も良いです。
色々な料理がありますが、一般的な料理を紹介します。
鯵の水洗い
- ぜいごをとり、軽く包丁で鱗を確認する。
- エラ、内臓を取り除く
- 綺麗に水で洗う。ここまでが水洗い
鯵の造り(刺身)
【作り方】
- 水洗いした鯵を3枚に卸す
- 骨をあたる
- 皮を引く
鯵は姿を使っても見栄えが良いので、姿を使っている店舗も良く見ます。
昆布締めにしても美味しい。
鯵の塩焼き(焼き物)
鯵の水洗いする際、エラをとる作業で割り箸を口から入れエラを絡ませ内臓ごと引き抜く(ツボ抜き)。簡単で姿を傷つけずに大量にやる際も簡略化できて良い。
串を打ち、塩をして焼く。
海が近い飲食店などでの一品料理などで見ることもあるが、コースなどの焼き物で使う事はあまりない。
たっぷりの大根おろしで食べるのが美味しい。
鯵干物
海の近い旅館などの朝食には必ずでてくる干物。
鯵を開き、塩水に漬け、乾かし、旨味を凝縮させた保存食
鯵のなめろう(一品料理・お通し)
千葉の郷土料理
【由来】 皿をなめまわて食べるほど美味しい。
鯵・生姜・大葉・茗荷・田舎味噌・他調味料
【作り方】
- 鯵は水洗いして、三枚に卸す。骨を当たり皮をむく
- 生姜・大葉・茗荷を細かく刻んで水に通しておく。
- 鯵を細かくカット
- 田舎味噌と鯵を混ぜ包丁で叩く。鯵の形がなくなるまで
- 生姜・大葉・茗荷を加え、さらに叩く
- 味をみて、薄口醤油、味醂、砂糖などで調節する。
なめろうという名前の他、鯵の味噌叩きや鯵の叩きなどと言う名前でも提供されています。味噌は田舎味噌と記載しましたが、各店舗で独自の合わせ味噌を使っている所が多いです。
なめろうを焼けば、『さんが焼き』となります。ホタテやサザエの殻、ツバキの葉の上で焼きます。
鯵と胡瓜の鳴門巻き(酢の物)
鯵・胡瓜・塩・三杯酢・黄身酢・赤芽
【作り方】
- 鯵は水洗いして、三枚に卸す。骨を当たり皮をむく
- 鯵に振り塩をして30分程置き、水で塩を洗い流す
- 胡瓜はかつら剥きして、塩水につけ、しんなりさせ、水につけ塩気を抜く
- 三杯酢に鯵を10分程つける
- 鯵をそぎ切りにする
- 巻きすの上にラップを敷き胡瓜に鯵を巻いていく
- 提供する大きさに包丁
天に黄身酢と赤芽などがあれば、見た目も良く夏に合う酢の物が出来上がります。
また白板昆布などを使うと味に深みがでて高級感が増します。
次の日に使うなどの保存を考えなければいけない場合は三杯酢に漬ける時間を長くしましょう。
鳴門とは渦巻き状の料理に付けられる名称です。
鯵の中骨の煎餅
鯵の中骨は捨ててしまう事も多いのではないでしょうか。
お酒の当て位にしかなりませんが、コスパ良く酒が進むものとなっています。
【作り方】
- 鯵を卸した時の中骨の血合いを綺麗にとり冷凍
- 低温の油でキツネ色になるまで揚げる
- 油から上げて、油が切れたらもう一度高温の油で揚げる
- 油から上げたら塩と味の素で当たりをつける
単品で提供していたこともありますが、人気でした。
鯵の青海焼き(焼き物)
蓼焼きのこと。
玉素に蓼の青寄せを混ぜても綺麗にあがります。
ほとんど見ることは無いですが、以前旅館などの朝食などで提供されていました。
鯵の豆魚田(焼き物・前菜)
焼いた味に豆をのせて、魚田風に仕上げたもの。
鯵の切り身に味噌を塗り、グリンピースや空豆を裏漉したものをのせ焼く。
魚田とは、魚の田楽のことで味噌をつけ焼く。特に味噌に決まりはなく、赤、白味噌の他に柚子味噌、木の芽味噌などを用いることもできる。
鯵大和揚げ(揚げ物・一品料理)
叩いた鯵と同量の大和芋、大葉を混ぜ海苔で巻いて揚げたもの。天出汁も提供する。
簡単な料理だが子供が好む。酒の当てにも良い。
アジフライ(揚げ物)
ランチやお子様膳などに使われる事の多いアジフライ。
鯵を開き、パン粉を付けた揚げ物。
献立お役立て!
刺身にする事の多い魚で使用頻度の多い魚だと思います。
マアジも美味しいのですが、脂のり、歯ごたえなどから刺身にする鯵は、シマアジが一番オススメです。アジと名乗っていますがシマアジとマアジは別ものです。
昔、静岡で数カ月働いたことがあるのだが、その時魚屋に『尾赤鯵』というものに出会った。ムロアジの仲間だと思うのだが(形はムロアジで尾が赤い)非常に安価なのだが旨かった思いがある。
和食で寿司を食事にするところもあるだろうが、夏のコースの締めに鯵の手毬寿司などにしてお新香の手毬寿司と共に提供している。さっぱりしていて、コースの締めには良いと思う。
鯵のなめろうのお茶漬けも非常に好評だった。なめろうと玉露の相性は非常に良いので是非一度試してほしい一品です。