鮎の盛り付けについて『海腹川背』という言葉を習い「川魚は頭が右、海の魚と区別するため」という事だと教えて頂きました。これが私の基本になっていましたが、店舗が変わると違う事も習いました。
まず『海腹川背』は焼く時の心得である。「海の魚は腹から焼く、川の魚は背から焼く」と言っていました。これは昔の考えなのでしょう、現在では天火、下火の焼き台などあり用途によって様々です。一概にこの通りだとは言えません。基本提供する時の形を考え焼く。これが私の考えになっています。
鮎については「頭を右にすると縁起が悪いから、頭は左遡上をイメージするように腹を下に背を上に盛る」とならいました。これは祝儀の席で頭付きの魚が出される時頭が左、なので反対を向いている時は不幸があった時だそうです。しかしよく考えてみると葬儀の席、精進落としや法要などで頭のついている魚など見た事もありません。
海腹川背
海のさかなは頭を左に腹を手前にし、川魚は頭を左に背を手前に盛る事
明解日本料理大辞典
正解は分かりませんが、店舗ごとに考え方が違い面白いなと感じました。各々のセンスで焼き盛り付ければよいのだと解釈しました。
色々教わりましたが、私は鮎串を打って提供する場合は頭は右、鮎串を右手でとってそのまま食べても大丈夫ですという意を込めて。
普通に提供する場合は、鮎は踊り串して焼き。(鮎がクネクネしていて遡上をイメージさせます)頭左で立てて(腹を下にして)提供します。食べやすいし見た目も綺麗だと思ったからです。
すいません少々長くなってしまいました。ココから鮎料理と基本情報など紹介していきます。
鮎基本情報
アユ科アユ属の川魚
全長30㎝。1年しか生きないと言われることから、年魚(ねんぎょ)、あるいわ特有の香りから香魚(こうぎょ)と呼ばれることもある。稚魚は川を下り海へ入り冬を越し、翌年の春再び川をさかのぼって、親となり、秋に産卵する。
稚魚は動物性のものを主に食べるが、大きくなると川底の石についているケイソウ、ランソウ等を食べる様になる。その為鮎独特の香りが強くなり、旨味が増す。
幼虫が寄生している事もあるので、背越しや生食する時は注意が必要。
【名前の由来】
諸説あります。
- 川を下る姿から『こぼれおちる』という意味の『あゆる』からきている
- 神功皇后が魚占いに使った魚がアユだったため、魚に占うでアユとなった。
アユの旬
夏場 6月~8月
6月1日の解禁日から落ちあゆが初秋まで出回る。
夏を代表する川魚で6月~8月が旬で特に8月の鮎は味が良いとされている。近年では魚肉、配合飼料を与えた養殖の鮎も多く生産されているが、香味が乏しく旨味が少ない。
鮎の産地
日本全国の清流に住む。
天然物や放流鮎は九州、岐阜、広島、京都、高知などが主産地
養殖物は徳島、和歌山が主産地
鮎の種類
天然・半天然・養殖とあり。天然物が高価で一番うま味も香りもある。
天然鮎
30cm程になるが出回るのは20cmくらいのものが多い。背びれと尾びれの間に脂びれがあり、胸びれの上方に側線上に2個の黄色い斑紋がある、口は角ばっていて苔を食べえるのに適した形になっている。
養殖鮎
天然のアユに比べると、全体的に太っており、頭の後ろから背にかけて脂肪がたっぷりついている。尾びれの形は運動不足の為不自然な形になっている。
半天然鮎
餌に岩苔と同じ藻の一種メキシコ産スピルリナを配合したり運動量を増やすため養殖場工夫してより天然に近い形、色、味に飼育したもの。養殖物に比べるとスマート。養殖物に比べると2倍ほど高価。
うるかとは
アユの内臓で作った塩辛。製法によりいくつかの種類がある。
- 切り込みうるか・頭と尾を外し内臓ごと細かく切って作る
- 子うるか・卵巣を用いる(一般的うるか)
- 白うるか・精巣を用いる
- 苦うるか・内臓全体をつかう
- 泥うるか・内臓を十分に洗わず用いる
- 子交じりうるか・卵巣、精巣を用いる
鮎料理・調理法
鮎は香魚とも呼ばれるように、独特の香りが特徴この香りを生かすような料理が良い
鮎塩焼き(焼き物)
- 鮎は肛門から汚物を出し、綺麗に洗っておく
- 水気をよくふき取って口から串を打つ(のぼり串)
- 塩を振る。(ひれ、尾びれに化粧塩)
- 両面こんがり焼く。ゆっくり時間をかけ焼く
- 中まで火が通り焼きあがったら串を抜き提供
鮎の塩焼きには蓼酢が基本です。
金串き後で竹串に差し替え提供する場合などもあります。
蓼酢は合わせ酢のページにて紹介しています。
鮎背越し(造り)
若鮎を用いる。できれば天然の鮎を使用する。
- 鮎はウロコをとり、肛門から汚物を出す
- たて塩で綺麗に洗う
- 頭を落とし腹を開き内臓は取り除く
- ヒレは包丁の顎で抑えて全て取り除く
- 頭の方から薄く輪切りにする。身がつぶれないように
- 包丁した身は氷水で洗い、よく水気をふき取り使用する
頭と尾を盛り付けに使う事もよくあるので、捨てないように注意すること。
若鮎でないと骨が固いので背越しは作れない。
子持ち鮎の煮びたし(煮物・前菜)
- 鮎は遠火でしっかり焼き、油を落とすため一日置く
- 鍋に竹ひごか敷ザルを敷いて鮎の表面になる方を上にして並べる
- 番茶を入れ、落とし蓋をして、30分程火にかける
- 酒を入れひたひたになる様にいれて1時間程煮る
- 砂糖、醤油、水あめで炊いていく(醤油は数回に分けて入れる)
甘露煮より味は薄め。甘露煮を作りたい場合は水あめの量を増やし煮汁が少なくなるまで炊いていきましょう。
鮎ご飯(食事)
塩味に炊いたご飯に鮎の塩焼きをむしったものと蓼を混ぜたもの。土鍋で提供する時は、焼いた鮎を入れてご飯の蒸らし時間に入れて、提供して骨を取ってあげるのもよい。
鮎の揚げ田楽(揚げ物・前菜)
揚げた鮎に田楽味噌をつけて焼いたもの
- 鮎は綺麗に洗って水分を良くとっておく(養殖、古い鮎の場合は内臓はとる)
- 小麦粉をつけて油でカラッと揚げる(140℃6分位)
- 田楽味噌に(味噌は白でも赤でもよい)蓼の葉を刻みいれる
- 鮎に味噌を適量塗り、ケシの実をかけて、オーブンで焼く(10分位)
2色の味噌を使って、源平という名で献立を書いても良い
鮎膾(あゆなます)(酢の物)
- 鮎を3枚に卸して、皮を引いて細づくりにする
- 大根、蓮芋などを取り合わせ加減酢などで和える
鮎の踊り食い(兵庫県滝野町の名物料理)
元は兵庫県滝野の名物料理だが現在では各地に見られる。体長4㎝~5㎝の稚魚を生きたまま酢味噌つけて食べるもの。酢味噌は木の芽、蓼などで香りをつけている事が多い。
鮎の竹鮨(酢の物)
熊本県の郷土料理。青竹の節をくりぬき酢、塩を入れ鮎を釣るたびに仕込むと、自然発酵によりあめ色の酢漬けができる。そのままか、焼いて食べる。熊本、大分県だけに見られる鮎の珍しい酢の物。
鮎雑炊(岐阜県の郷土料理)
古くは傷ついた市場に出せない鮎活用する料理だった。現在ではメイン料理として使われている。
名前の通り鮎の入った雑炊。
焼いた鮎を米にのせ、出汁をかけ混ぜ、薬味などのせ提供。
献立お役立て!
鮎は夏の献立に欠かせない川魚です。塩焼きにするにしても、提供時、鮎串にさして笹で周りを彩ってしたりしますが、提供方法や調理工程も大事ですが、食材の良し悪しが非常に大事になってくる食材です。できれば天然のものが良いですね。味、色、形どれをとっても天然がよいです。
記載はしなかったですが、私は稚鮎を高い頻度で使用します。主に塩焼き、木の芽焼き、などにして前菜にすることが多いです。小さい魚でしっかりと形あるまま使える魚は多くなく稚鮎があると前菜が映えますね。単品などでは『稚鮎の天ぷら』などは人気でした。稚鮎が余ってしまったら冷凍しておきある程度たまったら『稚鮎の南蛮漬け』にしていました。