塩麹は近年再び注文を集めている発酵調味料の一つです。料理に深みや柔らかさなどを手軽にもたらしてくれ家庭で簡単に使える調味料として人気が広がっています。
この記事では塩麹が何か?使い方や塩麹の原材料、歴史など塩麹の魅力を解説します。
麹?糀?
麹と糀どちらの漢字を使うのが正しいのか?
同じ「こうじ」を指す言葉ですが使用する場面や意味合いに少し違いがあるので説明します。
麹(こうじ)こちらは一般的な表記で発酵食品の「こうじ」を指す時につかいます。米、麦、大豆などの穀物に繁殖させた麹菌を使ったもの全般を指します
糀(こうじ)は、米麹(こめこうじ)を指す場合に使われる。この糀という漢字は日本で作られた漢字で、【米】に関連する発酵を象徴していて、【花】は発行が進む過程で花が咲くような発酵の美しさを表現している。
まとめると
麹・・・広い範囲での米、麦、大豆を含む「こうじ」を指し使う
糀・・・「こめこうじ」のみに使われる
この記事では米麹も含め全て【麹】の漢字で統一しております。
塩麹とは?基本情報とその歴史
まずは塩麹とは何なのか?どのような歴史があるのかを知っておきましょう。
塩麹は何からできている?
塩麹の材料は、麹・塩・水の3つ
驚きですね!たったの3つの材料からできています。
では?麹とはなんでしょう。
蒸した米や麦、大豆などの穀物に「麹菌」と呼ばれる微生物を繁殖させたものです。この麹菌が働くことで、食品の発酵が進み、酵素が作られます。酵素は、でんぷんやたんぱく質などの成分を分解し、食品に甘味や旨味を生み出す重要な役割を果たします。
麹は、日本の伝統的な発酵食品の基礎を支える存在で、味噌や醤油、酒、みりん、そして塩麹など、多くの調味料や発酵食品の製造に欠かせません。麹の種類によって風味や用途が変わり、例えば米麹、麦麹、豆麹などが存在します。
簡単に言えば、麹は「発酵の力を引き出す材料」として、和食文化に深く根ざした存在です
塩麹の歴史・いつどこから来たのか?
塩麹の歴史は、麹を使った発酵食品の長い伝統に根ざしていますが、具体的に「塩麹」が誕生した時期については明確な記録は残されていません。
日本における麹の利用自体が非常に古く、塩麹もその一部として発展してきました。ここでは、塩麹の起源や発展に関する歴史をお伝えしましょう。
麹の起源
麹の使用は、弥生時代(紀元前300年~300年頃)に稲作が伝来した頃から始まったとされています。当時、米を利用して発酵食品を作る技術が中国や朝鮮半島から伝わり、麹の技術も同時に伝来したと考えられています。
飛鳥時代(593年~710年)に入ると、日本で麹を使った発酵食品が本格的に普及し始めました。この時期に麹を使って味噌や醤油、酒などが作られるようになり、麹菌が重要な役割を果たしてきたのです
塩麹の誕生
塩麹という形での発酵調味料の誕生については、古くから地方の発酵文化の中で自然に作られ始めたと考えられています。特に、東北地方や北陸地方で塩麹が作られていたとされ、発酵技術が発達したこれらの地域では、長い間、保存食として利用されてきました。
江戸時代以降
江戸時代(1603年~1868年)には、日本各地で麹を使った食品の製造が盛んになりました。塩麹は、その保存性や旨味を引き出す力から、家庭で作られ、特に魚や肉を保存するために使われるようになりました。塩麹で漬け込むことで、食品が長持ちし、風味も良くなるため、家庭料理や漬物作りにも広く活用されていました。
現代におけるブーム
塩麹が現代で広く知られるようになったのは、2000年代初頭に入ってからのことです。発酵食品の健康効果や自然な旨味が注目される中、塩麹が脚光を浴びるようになりました。特に2010年頃からメディアで紹介されるようになり、塩麹ブームが到来します。自宅で簡単に作れる点や、料理に幅広く活用できる点が評価され、家庭でも手軽に発酵を楽しむための調味料として、塩麹が定着していきました。
現代では、塩麹は単なる保存食の手段としてだけでなく、旨味を引き出し、肉や魚を柔らかくするための万能調味料として愛用されています。和食を中心とした料理に加え、洋食や中華などにも応用され、その使用範囲が広がっています。
塩麹の手作り方法・自宅で仕込んじゃうぞ
近年ではチューブの商品も数多く売っていますが、ここまで読んでみたら、自分で作りたくなったのでは?少々時間と手間はかかりますが、仕上がった時、塩麹に愛情が生まれると思いますので是非作ってみてください。
塩麹作る材料と手順
米麹を使っての作り方となります。麹には「生」と「乾燥」がありますので両方とも記載
・米麹 200g
・塩 60g
・水 生の場合200㏄・乾燥の場合300㏄
※分量は目安なので、作る量に合わせて調整してください。
1. 麹の準備
- 乾燥麹の場合:まず、乾燥した米麹をほぐして、固まっている部分をしっかり手で崩します。麹が固まっていると発酵がうまく進まないため、均一にほぐすことがポイントです。
- 生麹の場合:特にほぐす必要はありませんが、固まりがあれば軽くほぐしてください。
2. 塩を混ぜる
ほぐした麹に塩を加え、しっかりと混ぜます。手で混ぜ合わせることで、塩が麹全体に均等に行き渡るようにします。
3. 水を加える
- 乾燥麹の場合:水を300ml加えます。麹が水分を吸収するので、しっかりと全体に水をなじませます。
- 生麹の場合:水は200ml程度に抑えて加え、同じく全体に行き渡るように混ぜます。
4. 容器に移す
すべての材料がしっかり混ざったら、清潔な保存容器に移します。ガラスやプラスチックの容器がおすすめです。発酵中にガスが発生するので、ふたはしっかり閉めずに軽くかぶせるか、ゆるく閉めておきます。
5. 発酵させる
常温(20〜30℃程度)の場所に置き、1日1回かき混ぜながら発酵させます。かき混ぜることで、均等に発酵が進み、麹全体に水分が行き渡ります。発酵には1週間から10日ほどかかりますが、気温や湿度によって時間は変動することがあります。
6. 完成の確認
塩麹が完成する目安は、麹の粒が柔らかくなり、甘い香りがしてきた時です。味を見て、塩気と甘味がバランスよく感じられれば完成です。
7. 保存
完成した塩麹は、冷蔵庫で保存します。冷蔵庫に入れることで発酵が緩やかになり、長期間保存が可能になります。約半年ほど保存できますが、時間が経つにつれて風味が少しずつ変わっていきます。
発酵のポイントと注意点!
ポイントと特に注意してほしい点をまとめました
【ポイント】
- 麹をほぐす:麹が固まっている場合はしっかりほぐし、発酵を均等に進める。
- 塩の分量を守る:適切な塩分量(麹の重さに対して約30%)を守ることで、発酵がうまく進む
- 1日1回かき混ぜる:均等に発酵を進めるため、1日1回必ずかき混ぜることが大切。
- 温度管理:20〜30℃の室温が発酵に最適。高すぎると発酵が進みすぎ、低すぎると遅くなる。
【注意点】マジ注意!失敗に直結するよ
- 清潔な容器を使う:発酵食品なので、雑菌が入らないように、容器や道具はしっかり洗いうこと
- 発酵期間の確認:気温によって発酵の速さが異なるため、柔らかくなり甘い香りがしてきたら完成を確認。
- 冷蔵保存:完成後は冷蔵庫で保存し、発酵を緩やかにする。
塩麹の使い方・料理に上手に生かすコツ
ここまで塩麹について色々学んで来ましたが、どのような料理に合うのでしょう?ここでは塩麹を上手に生かすコツを伝授しちゃいます。
個々の作り方【塩麹を使ったレシピ】のページも作成中ですのでお待ちください。
肉や魚を漬け込み、柔らかく旨味アップ
肉や魚を漬け込むとき、どれくらいの時間が良いかは料理や素材によって大きく変わりますが大まかな目安となる時間の記載をしておきます。
肉の場合・・・1時間~8時間
魚の場合・・・30分~4時間
次に塩麹に漬け込むことで得られる効果!を紹介します。
- 柔らかくなる
塩麹に含まれる酵素(プロテアーゼ)がたんぱく質を分解し、肉や魚が柔らかくなります。特に肉はジューシーでしっとりとした食感に仕上がります
- 旨味が増す
麹の発酵によって生じるアミノ酸やグルタミン酸などの旨味成分が、肉や魚にしっかり染み込み、自然な風味を引き出します。
調理後も旨味が濃縮され塩麹の塩気と相まって、味わい深い一品になります
- 臭いけし
塩麹は肉や魚の臭みを軽減する効果があります
特に魚料理において、漬け込むことで生臭さが軽減され食べやすくなります。
- 調理が簡単に
塩麹で下味をつけておくことで塩を別途加える必要がなくなり、調味料が少なくても十分に美味しく仕上がります。
野菜の浅漬け
野菜を漬けるときの大まかな目安
・薄切り野菜など・・・30分~1時間
・根菜(蓮根やごぼうなど)・・・2時間~4時間
塩麹に漬け込むことで得られるメリットを紹介します
- 柔らかくなる
塩麹の酵素が野菜の繊維を柔らかくし、歯ごたえが良くなります。特に根菜類や硬めの野菜に効果的です。
- 旨味が増す
野菜そのものの甘みや旨味が引き出され、塩麹の発酵によるコクが加わります。調味料が少なくても十分美味しく仕上がります
- 栄養価アップ
発酵によってビタミンやアミノ酸が生成され、栄養価が高くなる
- 消化を助ける
塩麹に含まれる酵素が、野菜の成分を分解しやすくするため、消化がスムーズになり、腸内環境の改善にもつながります。
- 保存性が向上
塩麹で漬け込むことで、野菜が長持ちしやすくなります。漬物感覚で使えるため、作り置きにも便利です。
スープやソース、ドレッシングに塩麹をプラス
塩麹をスープやソースに活用することで、自然な旨味やコクを加え、健康的で美味しい料理に仕上げることができます。特に塩分を控えたい場合や、消化を助けるために、さまざまなスープやソースに活用してみてください。
一例になりますが塩麹でつくるスープやソース
- 味噌汁
自然な旨味が加わり、より深みのある風味に仕上がります。塩味も調整できるため、塩の代わりに使用することで、発酵のコクと栄養をプラスすることができます。
- パスタソース
トマトソースやクリームソースなどに少量の塩麹を加えると、自然なコクと旨味が増します。特にクリーム系のソースでは、塩麹の酵素が乳製品の成分を引き出し、濃厚でまろやかな味わいになります
- 煮込み料理
カレーやシチューなどの煮込み料理に加えることで、旨味がしっかりと馴染み、まろやかな風味に仕上がります。特にカレーでは、スパイスの風味を引き立て、塩味のバランスもとりやすくなります
- ドレッシング
オリーブオイル、レモン汁、塩麹を混ぜ合わせて、簡単な和風ドレッシングを作ることができます。サラダの野菜に旨味が加わり、シンプルでヘルシーな味わいになります。
- マリネソース
塩麹を使ったマリネソースは、肉や魚、野菜に合わせるのに最適です。例えば、レモン汁やハーブ、オリーブオイルと塩麹を混ぜて、魚や肉を漬け込むと、シンプルながら風味豊かなマリネが完成します
塩麹の健康効果とは?発酵食品の力
ここまで塩麹の作り方や上手な使いかたを学びました。最後に塩麹の健康効果を紹介します。
消化を助ける酵素の働き
塩麹に含まれるプロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼといった酵素が、食材を柔らかくし、旨味や甘味を引き出すことで、料理をより美味しく仕上げる役割を果たします。
また、これらの酵素が消化を助け栄養の吸収を促進する効果も期待できるため、塩麹は健康面でも優れた調味料といえます。
酵素1つ1つの働きと効果を解説します。
プロテアーゼ(タンパク質分解酵素)
働き:タンパク質をアミノ酸に分解します。
効果:肉や魚に含まれるタンパク質を分解することで、食材を柔らかくし、旨味成分であるアミノ酸が増加します。これにより、塩麹で漬け込んだ肉や魚が柔らかく、風味豊かに仕上がるのです。
アミラーゼ(デンプン分解酵素)
働き:デンプンを糖に分解します。
効果:野菜や米などに含まれるデンプンを分解し、甘味を引き出します。これにより、塩麹で漬けた野菜やご飯に自然な甘さが加わり、まろやかな風味になります。また、塩麹を使った料理全体に奥深い甘みが感じられるようになります。
リパーゼ(脂肪分解酵素)
働き:脂肪を脂肪酸に分解します。
効果:肉や魚の脂肪を分解し、風味がよりクリアに、そしてさっぱりと感じられるようにします。また、脂肪酸は風味や旨味を引き立てるため、料理全体の味わいが豊かになります
免疫力アップで美容効果に期待
塩麹は、その発酵による栄養価の高さから、免疫力の向上や美容効果が期待できる食品です。具体的なメカニズムとその効果について解説します。
腸内環境の改善
塩麹は発酵食品であり腸内環境を整える役割があります。
発酵によって生成された酵素や有機酸は腸内の善玉菌を増やし腸内フローラのバランスを改善します。
腸内環境が整うことで免疫細胞の70%が存在する腸が活性化され、体全体の免疫力向上につながります。
消化酵素の補給
塩麹にはプロテアーゼ(タンパク質分解酵素)やアミラーゼ(デンプン分解酵素)などの消化酵素が豊富に含まれており、消化を助けます。これにより、栄養素の吸収効率が高まり、体の免疫力維持に必要なビタミンやミネラルが効率よく体内に取り込まれます。
アミノ酸の供給
塩麹の発酵過程で生成されるアミノ酸には体の修復や免疫機能をサポートする役割があります。
特にグルタミン酸やその他のアミノ酸が体内で有効に働き免疫細胞の活動を助けるため、感染症やウイルスに対する抵抗力が向上します。
美肌効果(コラーゲン生成の促進)
塩麹に含まれる酵素やアミノ酸は肌の健康に必要なコラーゲンの生成を助けます。
プロテアーゼがタンパク質を分解、コラーゲン生成に必要な成分を供給することで肌のハリや弾力を保つのに役立ちます。
特に食材に含まれるコラーゲンの吸収が促進され、肌の潤いや弾力が改善されます。
抗酸化作用
塩麹に含まれるアミノ酸やビタミンB群は、体内で抗酸化作用を発揮し、老化の原因となる活性酸素を除去する働きがあります。
これによりシワやシミの予防、美白効果が期待でき健康的な肌を保つサポートをします
代謝の向上
発酵食品である塩麹は、代謝を高める酵素が豊富に含まれています。
代謝が向上することで、老廃物の排出が促進され、デトックス効果が得られます。これが、体内の不要な物質を排出し、肌トラブルやむくみを防ぎます
肌トラブルの予防
腸内環境の改善が肌の調子に直結することは多くの研究で示されています
塩麹を摂取することで腸内の善玉菌が増え便秘や腸の不調を改善することにより肌荒れやニキビなどのトラブルが予防されます。
腸内環境が整うと肌が明るく健康的な状態を保てます
保湿効果
塩麹には糖質を分解するアミラーゼが含まれておりこれが食材の保湿力を高め食事を通じて体の内側からも肌の潤いを保つことに貢献します