その「みりん」、実は“みりん風”かも?料理が変わる調味料の選び方
和食の基本調味料のひとつ「みりん」煮物や照り焼き、甘辛い味付けに欠かせない存在ですが、スーパーで手に入る“みりん”には種類があるのをご存じでしょうか?
中でもよく見かけるのが「本みりん」と「みりん風調味料」ラベルを見ても似たような名前、色もそっくり。つい安い方を手に取ってしまいがちですが――実はこの2つ、味も香りも使い勝手もまったく違う調味料なのです。
この記事では、本みりんとみりん風調味料の違いをわかりやすく解説しながら、実際にどう使い分ければいいのか、料理人としての視点も交えてご紹介します。
読んだあとには、きっとスーパーで「本みりん」を選ぶ理由が見えてくるはずです。
本みりんとみりん風を鶏の照り焼きで検証した動画もありますので、そちらも見てみてください
本みりんとみりん風調味料の違いとは?
まずは「本みりん」と「みりん風調味料」がそもそも何なのか、その違いを整理してみましょう。
本みりんとは?
本みりんは、もち米・米麹・焼酎(または醸造アルコール)を原料として、40〜60日かけてじっくり発酵・熟成させた、れっきとした「醸造調味料」です。
- アルコール:約13〜14%
- 味わい:自然な甘さとコク、照りが美しく出る
- 香り:ふんわりとした甘い香りと、発酵の奥深さ
- その他:アルコールによって魚や肉の臭みも抑える効果あり
本物の「みりん」は、単なる甘味料ではなく、料理に香り・照り・深みを加える“和食の格上げ役”なのです。
みりん風調味料とは?
「みりん風調味料」は、みりんに似せて作られた甘味調味料です。主な原料はブドウ糖や水あめ、酸味料、うま味調味料などで、発酵は行われていません。
- アルコール:ほぼ0%(1%未満)
- 味わい:甘みはあるが単調で、コクや香りは薄め
- 値段:安価で手に入りやすい
- 注意点:アルコールが含まれないため、臭み消しや香り付けには不向き
本みりんと同じように使っても何か物足りないと感じたことがあるなら、それはこの“風”の差かもしれません
みりんとみりん風比較
特徴 | 本みりん | みりん風 |
原材料 | もち米・米麹・焼酎 | 水あめ・ブドウ糖 |
製造方法 | 発酵・熟成 | 合成・調整 |
アルコール | 13%~14% | 1%未満 |
風味・香り | 発酵香・コクあり | 控えめ |
甘み | まろやかで自然 | 単調 |
値段 | 高価 | 安価 |
味・香り・仕上がりが全然違う!みりん風と本みりんを料理で比較
見た目はそっくりな「本みりん」と「みりん風調味料」ですが、実際に料理に使ってみると、その違いは驚くほど明確です。ここでは、味・香り・仕上がりの3つのポイントから比較し、どちらを選ぶべきかをわかりやすくお伝えします。
甘みの質
本みりんは丸く、みりん風は尖っている!
- 本みりんの甘さは、もち米由来の自然な甘み。舌にじんわり広がるまろやかさが特徴です。コクもあり、砂糖を使わなくても深みのある味わいに仕上がります
- 一方、みりん風調味料の甘さは、砂糖や水あめのような直線的な甘さ。味が単調で、奥行きに欠けるため、甘いけど物足りないと感じることも。
香りの違い
加熱してわかるふわっと広がる芳醇さ
- 本みりんを加熱すると、アルコールとともに芳醇な香りがふわっと立ち上がります。特に煮物や照り焼きでその違いがはっきり出ます。
- みりん風調味料はアルコールが含まれないため、加熱しても香りが立ちにくく、風味が単調。料理の香りの層が薄くなります。
照り・ツヤ
仕上がりの美しさが段違い
- 本みりんは糖分が高く、加熱すると食材に美しい照りを与える性質があります。おせちの煮しめや、照り焼きに使うとプロらしい仕上がりに
- みりん風調味料も多少のツヤは出ますが、ギラッとした光り方になりやすく、自然な美しさには欠けます。
実際に試してみた例
煮物での違い
- 本みりん・汁がまとわりつくような照りとコク。最後まで風味が残る。
- みりん風・甘さはあるが、味の伸びがなく、食べ進めるうちに単調に
照り焼き
- 本みりん・焼き上がりにしっかり照りが出て、香りも芳醇
- みりん風・ツヤはあるが、香りが弱く、砂糖感が勝つ味に
比較してみて
本みりんとみりん風で料理に与える影響は非常に大きいです。本みりんは料理の格を引き上げてくれる名わき役の調味料です。
皆さんここでやめないでくださいね。みりん風にも良い所や使い道はあるんです。この先はそのような事も交え解説します。
みりん風でもOK?本みりんとの使い分けとそれぞれのメリット
ここまでは何かみりん風の悪口ばっかり言って、本みりんの宣伝のようになってしまいましたが、家庭にあるのはみりん風なのでこれの上手な使い方を知りたい人もいると思います。
みりん風調味料にも使いやすさというメリットがあります。料理の目的やシーンによって、うまく使い分けることで、美味しい料理を作ることが可能です。
みりん風のメリット、向いている料理
メリット
- アルコールがほぼ0なので加熱せず使える
- 価格が安く、使い勝手が良い
- 甘みをプラスしたいときに使える
こんな料理に向いている
- お弁当のおかず
- 炒め物やサラダの下味など
- 甘み調節
理由としては、お弁当の場合アルコール分が少ないみりん風を使うことで加熱時間を少し短縮でき、冷めても香りが残りにくい。
サラダの下味は、加熱不要で素材の味を引き立てる事ができます。
使い分けが大事ということですね。お店では本みりんしか使いませんが、家庭だと小さいもの1本ずつ常備しています。
スーパーで迷わない本みりんの見分け方とオススメ
同じような売り場に同じように陳列していると間違えてしまう事もあると思いますが、本みりんは、【本みりん】と明記されていますので本みりんが欲しい場合は本みりんと書かれている物をてにとるようにしましょう。
そして、確認の為、裏のラベルを見てみましょう。本みりんには、もち米、米麹、焼酎などが使われているので、原材料を確認しましょう。
本みりんのオススメ
オススメは【タカラ本みりん】です。値段もお手頃で、どこのスーパーにもあると思います。飲食店でも使っている所は多いです。
その他、国産にこだわるなら、マンジョウの本みりんなどもよいかと思います。値段を気にせず使えるなら九重味醂なども良いと思います。こちらの味醂は本格和食店が好んで使うことが多いしな物です。
おわりに
“なんとなく”から一歩踏み出すだけで、料理はもっとおいしくなる
「本みりん」と「みりん風調味料」。
見た目はそっくりでも、その中身はまったく違うということがお分かりいただけたかと思います。
本みりんは、ただ甘いだけではなく、自然なコク、豊かな香り、照りの美しさまで備えた料理の格を上げる調味料です。
一方のみりん風調味料も、手軽さやコストの面では優秀で、使いどころを選べば家庭料理の味方になります。
つまり大切なのは、
「どちらが良いか」ではなく、
「どう違って、どう使うか」を知ったうえで、自分の料理に合った選択ができること。
ほんの少しの知識で、普段の料理がもっと美味しく、もっと楽しくなる。
もし今日の記事が、そのきっかけになれたのなら嬉しく思います。