現在世界約175か国で栽培されているタマネギ。生でも食べられる他、炒める、焼く、煮るなど様々な調理が可能で、色々な料理に使える万能性は野菜の中でもトップクラスではないでしょうか。
今回はそんなタマネギの細部までお伝えしております。
タマネギの基本情報
ヒガンバナ科ネギ属の多年草
学名はAllium cepaと言われるヒガンバナ科の植物。原産地はペルシャやベルチスタンと言われているが定かではありません。中央アジアから商人によって中東に持ち込まれてそこから世界中に広まっていったとされ、日本へは江戸時代末期に渡来。玉ねぎの英名である「onion」はラテン語の「union」(集合体)が語源となっている。甘タマネギと辛タマネギがあり、外皮の色によって黄、白、赤系に分類される。わが国では辛玉ねぎの黄系がほとんどであるが白色品種や赤(紫)色品種も栽培しており札幌黄、泉州黄、愛知白、貝塚早生、湘南レッドなど多くの品種があります。最近では小玉葱の需要も多くなってきています。鱗茎は径10cm前後の球形、または扁球形をしており、特異な刺激性の臭気がある。茎は円筒形で直立し、高さは50cmくらい成長して、下部に2~3枚の葉をつけます。一般に玉葱と呼んでいる部分は根ではなく葉の根元が養分を蓄えて丸く太った鱗茎と言われるものであり、これはニンニクやラッキョウと同じです。西洋料理のベースに利用されることが多いことから「西洋のカツオブシ」とも言われています。タマネギの花言葉は「不死」ですが理由は不明です。
玉葱は現存する最古の栽培植物の一つとされ、人類が狩猟採集から農耕社会に移行するに伴い、野生のものを畑で栽培し、生長がはやく鱗茎が大きい苗を交配するうちに、現在栽培されている大きくて甘い鱗茎を持つタマネギに近いものになってい行ったと考えられる。栽培の歴史は古く、紀元前1600年ごろにはすでに食されていたとされます。またピラミッド建築の壁画にもその絵がある事から紀元前3000年前にはあったのではないかという説があります。
タマネギ 旬
品種などにもよりますが10~12月が旬とされ、また新玉葱は4~5月とされます。
タマネギ 産地
主産地は北海道だが全国各地で栽培されている。
タマネギの生産量と収穫時期、旬など
世界のタマネギ生産量が多い国には以下の国々が例年上位を占めています。それは中国、インド、アメリカ、エジプト、トルコ、パキスタンなどです。
特に中国、インド、アメリカの3か国は例年1位~3位を占めており、中国、インドの2か国だけで世界の生産量のおよそ50%弱を生産しているほどのタマネギ大国です。日本は18位前後を維持しています。
日本におけるタマネギの収穫量は110万tほどで、主産地である北海道で全体の約7割を占めます。その中でも北見地域は多く、北海道の生産量の半分を占めます。次ぐ2番目は佐賀県と兵庫県が争う形でおよそ7%次いで愛知県が約2%を占め、これら一都三県で日本全体の90%近くを生産しています。
タマネギの出荷時期や旬などは地域によって異なります。
北海道産タマネギ・・・一般的な玉葱は9~4月出荷され、旬は10月~12月頃が旬とされます。
九州産タマネギ・・・九州ではタマネギの出荷時期は北海道とは出荷時期が逆になり、タマネギの出荷は5月~9月頃で旬もこの時期とされます。
愛知県産タマネギ・・・愛知県では主に新タマネギが生産されており、4月~7月に出荷されます。旬は4月~5月ごろです。
タマネギ 歴史
タマネギの発祥はペルシャやバルチスタンと言われているが定かではない。
インド、トルコ、エジプトなどでは野菜種に近い品種が古くから栽培されているが、タマネギの野生種は未だに発見されていない。
タマネギは紀元前1600年頃には粘土版にタマネギのレシピが書かれていて、この頃はタマネギが食べられ、タマネギの栽培をされていた。
日本にタマネギが伝わってきたのは1770年ころ明治時代の初めに長崎に伝わったのが最初だと言われています。ただ最初は観賞用でしかなく普及することはありませんでした。
食用栽培としてのタマネギは1871年(明治4年)に札幌でアメリカから導入した種子による試験栽培が始まりでした。この時の品種は定かではありませんがダンバースだとされる説があります。(栽培の結果しか残ってないこと、栽培方法が後の札幌黄と違うことからダンバース品種ではないであろうことは明白です)
タマネギの栄養価
タマネギは主要な栄養素だけを見てしまうとそれほど特質した栄養素は見られずカリウムが多い程度に留まります。カリウムはナトリウムと相互作用しながら細胞の浸透圧の維持や、水分の保持などの効果が見られ高血圧の予防などの働きがあります。
主要成分
100g当たりの栄養素
生の場合(水にさらした場合)
エネルギー 37Kcal(26KCal)
タンパク質 100mg(60mg)
炭水化物 8800mg(6100mg)
ビタミンB₆ 0.16mg(0.09mg)
カリウム 150mg(88mg)
パントテン酸 0.19mg(0.14mg)
タマネギは独特の辛み成分などを含んでいる為、水にさらして辛みをとって調理をしたりしますが水にさらすことで栄養価が半減してしまう野菜でもある為、さらし過ぎないことをお勧めします。タマネギの栄養価はこれら主要成分よりも独特の辛味、香り成分であるアリシンなどが特質しています。
タマネギの健康効果
タマネギには主要成分以外にも健康効果に非常に効果が高い成分がありますので、そちらも紹介します。
アリシンによる健康効果
アリシンとは「硫化アリル」という成分の一種でニンニクやタマネギをつぶしたり切ったりしたときに出る香り成分のことで、タマネギを切った時に目が痛くなるのも揮発性であるアリシンによるものです。強い香りや目が痛くなる原因であることなど、あまりいいように思わないかもしれませんが、この成分は様々な健康効果を生み出す体にとっていい成分なのです。主な効果は以下の通りです。
- 血栓予防・・・一般に血液サラサラという状態にし、血液の循環を良くする働きがありまるため動脈硬化や高血圧などに対して予防効果が期待できます。
- 善玉コレステロールの増加・・・細胞や動脈にたまったコレステロールを肝臓に流す役割があります。またアリシンは悪玉コレステロールの減少にも効果があります。
- ビタミンB₁の吸収を助ける・・・豚肉、鶏レバー、うなぎ、鮭、大豆などのビタミンB₁を多く含む野菜と合わせて摂取すると効果的であり、新陳代謝を活発にする働きがあります。
ケルセチンによる健康効果
ケルセチンは外皮が茶色いタマネギに多く含まれているポリフェノールの一種で抗酸化作用による動脈硬化やガンの予防、高血圧などに効果があるとされています。またカナダのゲルフ大学が大腸がんの細胞を減少させるという研究結果を発表しています。
ケルセチンはタマネギの食用部分にも含まれてはいますが、より多く接種したいのならタマネギの外皮部分(普段捨てる部分)を擂りこぎなどで擂って煎じて飲む他、ミキサーにかけてスープにしたり、口に残らないくらい刻んでから練り物に混ぜるなどするとよいです。ただアリシン同様にケルセチンも水に溶ける性質があるため調理した際にその汁ごと摂取できる調理法ができればよいです。普段食べない部分などで抵抗がある方は、水に弱い性質を生かしてスープを作る際にブーケガルニなどにして一緒に煮出して、料理完成前に捨てるという方法をとればおよそケルセチン含有量のおよそ20%程度を接種することができます。
その他栄養成分とその健康効果
- フラクオリゴ糖・・・腸内の善玉菌であるビフィズス菌を増やす働きがあるため整腸、便秘改善にも良いとされます。
- ヒスルフィド類・・・血糖値を下げて正常に保つ働きがあると言われ、糖尿病の予防や治療に効果をもたらすと言われています。
- グルタチオン・・・肝臓の解毒を助ける働きがあります。
- ピラジン・・・血小板の疑集を抑制する働きがあります。
たまねぎの主な品種
タマネギには東欧系の辛味品種と南欧系の甘味品種の2種に分けられている。日本で栽培されているタマネギは主に辛味品種である。色による分類は外皮の色により黄タマネギ、赤タマネギ、白タマネギに分けられる他、大きさなどでも分けられ小さくしか成長しないよう栽培されたものや品種改良したものなど多種多様タマネギがあります。
黄タマネギ
日本で栽培されているタマネギの中で一番多いのが黄色い外皮をもった黄タマネギです。一般的に市場で販売されているもっともポピュラーな品種でイエローダンバース系の札幌黄、泉州黄からの改良品種が多く栽培されています。オホーツク222、北もみじ、スーパー北もみじ、黄魁など様々な品種がある。
紫タマネギ(赤タマネギ)
アーリーレッドや湘南レッドといった品種が代表的で外皮が赤色をしているが果肉は白く、切った断面が赤紫又は白色の品種。一般的な黄色タマネギに比べ硫化アリルが少ないことから辛みが少なくスライスしてサラダなどに用いると瑞々しいのが特徴である。
白タマネギ
実が白く皮が薄いタマネギです。水分が多く果肉が柔らく甘いです。また辛みが少ないことからスライスしてサラダなどに合います。真白や愛知白などの品種があります。
ペコロス(小タマネギ、プティオニオン)
普通の玉ねぎを超密植栽培(3cm間隔ほど)により栽培し、玉が小さいまま5~6月に葉が倒伏し始めたころの小玉の状態(4cm程)で早期収穫するタイプの小タマネギです。近年では専用品種も販売されています。またパールオニオンや赤色のルビーオニオンもこれに当たります。
葉タマネギ
葉タマネギは玉の部分が膨らみかけた位で収穫し葉をつけたまま出荷するタイプのタマネギです。葉タマネギは春先だけに出荷します。玉ねぎと青ネギの両方を楽しめ、葉の部分は主にぬたにされ食されます。オニオンヌーボーやパイレーツなどのブランドがあります。
静岡県浜松市篠原町の「ヤマカツ農園」で栽培されているオニオンヌーボーは「世界で一番早く収穫されるタマネギ」として知られる葉タマネギで1月に収穫されます。
エシャロット(シャロット)
エシャロットはタマネギと同じヒガンバナ科ネギ属の野菜で分球して数個の鱗茎を作る玉葱の親戚のようなもの。小タマネギに似た小さめの鱗茎でフランス料理には欠かせない野菜の一つである。
タマネギの選び方や保存方法など
タマネギはよく利用する野菜ですから、大量に買ってダメにしてしまった経験もあるのではないでしょうか。タマネギの選び方と保存方法を知っておくだけでダメにしてしまう事も減ると思いますので『タマネギ選び方』『タマネギの保存方法』を紹介させて頂きます。
タマネギの選び方
- 先端部分が傷みやすいので首がしまっているものを選ぶ。
- 重みがあって皮が乾いていて艶があるもの。
- 表面にカビや痛みによる黒ずみなどがないかチェックする。
- 一般的に丸い形が良いとされていて平たい形は熟しすぎといわれるのでなるべく丸く形のいいものを選ぶ。ただ本州の玉ねぎはもともと割と平な形をしており、北海道は球形をしている為、購入する際は産地などもみてみるとよい。
- 根が伸びていない物を選ぶ。
タマネギの保存方法
- 基本的に風通しのいい場所で籠やネットなどに入れて保存する。またどうしても傷みやすくなる夏場などは一つ一つ新聞に包み、冷蔵庫の野菜室に入れるなどするとよいです。
- スライスして冷凍する。こうすることで繊維が壊れるため戻した時に火の通りが良くなり時短などにもなります。
- あめ色に炒めてから冷凍。解凍してすぐ使えるという利点があり、長期保存できます。
- 使いかけは必ずラップをかけてから冷蔵庫に入れる。
- リンゴやキュウイなどと一緒にするとエチレンガスにより生育が進み悪くなりやすくなる。
さいごに
タマネギの基本的な知識は入ったところで、色々なタマネギ料理に挑戦してみましょう